お陰様で昨年度から私に対する講演依頼が増加しています。「問い合わせ」をしていただいた方々にはお礼を申し上げます。
そのときによくある質問に対する回答をあらかじめ記しておきました。参考にしていただければと思います。
- Feb.16
2014 - エミール春期講習講座「計算のエチュード」のお知らせ。
以前から、高校数学における計算の重要性について触れておきましたが、この春、私が講師を務める「東大進学塾エミール」において私のオリジナル講座である計算講座「計算のエチュード」を2日間(6時間)ではありますが、実施することになりました。この講座はエミールに通わない外部の高校生にも一時的に開放してありますので、これから受験勉強を始めようとする新高3生のみなさんの参加を期待します。
日時は、3月21日,22日の 18:00 ~ 21:00 です。このような講座は他を見渡す限りありませんので、他の春期講習とは内容は重複しません。
以下は、エミールのパンフレットに載せた講座案内文を少し修正したものです。
★———————-★
ほぼすべての大学入試問題に欠かせない力が「計算力」である。しかし, この「計算力」を多くの人が誤解しているために高 3 になってから数学の成績が伸び悩むようになることが少なくない。
「計算」は「単純な作業」という一面がある一方, 「考える計算」というものがある。それは,
● 式をどのように見て捉えるか
(「多項式の次数は多項式の顔である」「定数と変数の区別」「式の中で重要な部分とそうでない部分の区別」等)
● 計画性に基づく式変形
(「意味のない変形をどれだけ行っても結果は得られない」「数学の苦手な人ほどやたらに数式を展開したがる」「結果からの逆算で方針が見える」「不要な変数の消去」等)
などこれから受験のための数学を学習する人にとっては欠かすことのできない内容である。
ほとんどの人にとって, この機会に学習しないと得ることのできない知識, 考え方なので数学をある程度得意としている高校生にも勧める。なお, 今回は数学 II, B までの範囲に絞って講義する。
(注): エチュード(Etude) は練習曲の意味。特定の技術向上のために作られた曲を意味する。
★———————-★
申込みに関することは、エミールのホームページ
東大進学塾エミール
からご覧ください。
(2月16日現在ではまだ告知されていません。もうしばらくお待ちください。)
- Jan.01
2014 - 新年のご挨拶
皆様、明けましておめでとうございます。昨年に引き続き本年もよろしくお願いします。
本年は多くの企画が予定されています。「受験数学の理論」、「数学の計算革命」の新課程版の刊行の他、新書の刊行も予定されております。これらについては、刊行日が近づいたときに詳細をこちらから発表させていただきます。今の段階で言えることは、「受験数学の理論」がこれまでの分野別であるのに対して、改訂版は「数学 IA」「数学 IIB」「数学III」のような分け方になっていることと、検定教科書のように「問い」「章末問題」などをつけて、多少ですが問題集の機能ももたせることです。「受験数学の理論」は高校数学の(文科省のカリキュラムによらない)真の教科書を目指してきました。これまで以上に質をあげてどこよりも受験生に適した「教科書」になるように努力して参ります。
また、数学教育そのものの改革にも着手する予定です。数学教育に携わる人がきちんとした理解のもとに高校生を教育しなければならないのは言うまでもありません。そのために、お手伝いになるような書籍も予定しております。
数学・数学教育以外には、自作のピアノ曲のうち独奏曲の楽譜の刊行も予定されております。
以前のように進捗状況をこちらで詳しく説明する予定です。よろしくお願いいたします。
- Dec.20
2013 - 中学入試の不思議な慣習
よく, 中学入試において「中学校の知識を使ってはいけない」と言う話を聞く。
中学校の知識が役に立つ部分としては, 例えば, 1 元 1 次方程式, 2 元 1 次連立方程式などがあげられる。もちろん他にもある。この話がどこまで本当かわからないが, 満更でたらめでもないような感触を受ける。
私としては、そのような制限は一部の優秀な小学生の才能の芽を摘む行為でしかないと思う。高校数学でもそうだが, 日本の数学教育のよくないところは, 学習範囲を制限するところにある。そして, このような制限は, 小学生の数学の力を大人が「教育的な理由」ではなく, 「政治的な理由」で抑え込む悪しき慣例ではないだろうか。
もちろん, 「中学校の知識を使ってはいけない」という事情に到達するまでは様々な経緯があったことだろう。「小学校の知識だけでどこまで考える力をもっているか量りたい」というのも理解できないわけではない。しかし, これでは, 小学校のときに中学数学を終えている児童, あるいは高校数学を終えている児童は受からないことになる。また, 連立方程式くらいをしっかり学習していれば, それはそれで中学校での手間は省けるのではないか。もしかして, 中学の先生は「小学校の塾で習うような教え方は嫌いだ!」などと考えているのだろうか。
優秀な小学生は, 中学数学の知識をもっていながら(あるいは理解する力をもっていながら)それを使わずに, 「中学入試のときだけ, 中学入試にあわせた方式で解く」と言った「大人の対応」をとることになる。中学入試の問題には, 人の一生の中で, そのとき(中学入試を勉強するとき)にしか役立たないことを多く含まれる。例をあげればきりがない。この労力は子供たちには実に無駄である。
本当に、「中学入試では中学校の知識は使えないのか」という問題に対しては, 私はよく, 中学入試を行っている学校の生徒に
「ここの学校の数学の先生は, 大学入試で教科書に載っていないことに対してうるさいか?」
と聞く。例えば, 「合同式」ですら「入試で使うな」と指導していたり, 「白抜きの Z (整数の集合を表す記号) を入試で使うな」などのように表現にすぎないことまでも厳しく指導するような教員がいるようでは, 中学入試もそう判断している可能性が高いからだ。こういう教員が大学入試を指導しているとなれば, 生徒に無駄な労力を強いていることになる。
次のような中学入試を行う中学校が出てくると画期的なのだが。それは, 中学校の募集要項で,
「中学入試の算数においては, 中学校の知識を正しく使っていれば, 満点を与えます」
と記してある学校だ。
すでに実際にあるのだろうか? それは私の不勉強で今のところわからない。
- Dec.18
2013 - 新課程数学の基本 (5)
今回、数学IIIと数学Cが数学IIIに統合された理由の一つとして
「数学Cの教科書を買わされたけど、全然使わなかったじゃないか」
という声があったかららしい。
つまり、数学Cの教科書は買ったのだが、実は授業を行っていない学校が結構あったということだろうか。また、旧課程では、数学Aは教科書の内容をすべて履修するものの数学B, 数学 C では教科書に書かれてある部分の半分しか履修しない。せっかく、買ったのに半分しか学習しないというのは、数学の他にどの教科があるのだろうか。
新課程でも数学 B の「確率分布と統計的な推測」は履修する学校はほとんどない。もしも、「数列」と「ベクトル」のみを扱った教科書の発行が許されるのであれば、それは飛ぶように売れることだろう。
さて、その数学 III に取り込まれた「複素数平面」であるが、前回に取り入れられたときは、北大、一橋大、東京医科歯科大が初年度から出題したが、多くの大学は新課程 3 年目からであった。東北大、東工大、慶応(医) のようにほとんど複素数平面に興味をしめさない大学もあった。
出題の仕方であるが、まず、最初はド・モアブルの定理を使う問題、回転移動した点の座標を求めるために利用する問題が多く、徐々に複素数平面の図形、1 次分数変換など難化していく傾向にあった。約 10 年間複素数平面が出題範囲の中にあったわけだが、最後の 1, 2 年はそれほど手の込んだものは少なくなっていったように感じる。
|z-a|=r の表す円とか、 w=(z+1)/(2z-1) による変換など教科書では扱わないものもあるので注意を要する。
ちなみに記号に関して不便なことが 2 つある。一つは、絶対値が r, 偏角がθである複素数を r(cosθ+isinθ) と書くのはちょっと長いということである。一部で適用されているように、
もう一つは「ベクトルABを表す複素数」に記号を用意してもらいたいということである。もちろん、その都度定義して使えばよいのだが、頻繁に使うものであれば共通して使えるように整備すべきと感じる。
- Dec.17
2013 - 新課程数学の基本 (4)
新課程になって新しく学習することになった分野には
「データの分析」「整数分野」「複素数平面」
がある。これらは、それぞれ次の点で状況が異なる。
・「データの分析」: これまでにはない新しい分野(と言ってよいだろう)。入学試験で出題された実績も(一部の大学とセンター試験を除いて)ほとんどない。
・「整数分野」: 文科省のカリキュラムとしては新しいが、すでに大学入試では出題されてきた。大学入試においてすでに「独自の文化」が形成されてある。
・「複素数平面」: 1994 年からのカリキュラムからは導入されたが、2003 年からのカリキュラムでは消滅した。すなわち「復活した新しい分野」である。
今回は、このうちの「整数分野」について述べる。
これまでの大学入試おける整数分野は大きく次の 4 つに大別される。
(A) 余りに関する問題 (2^100 を 7 で割った余りは何か?)
(B) 素数と互いに素に関する問題
(C) 整数解を求める問題
(D) 整数の離散性に関する問題
このうち、(C) の問題の
・ 3x+4y=1 を満たす整数 (x,y) の組を求めよ。
・ xy+2x+4y-7=0 を満たす整数 (x,y) の組を求めよ。
程度であれば、パターン暗記でも太刀打ちできるから数学が苦手な生徒でもある程度は何とかなる。新課程では、この(C)に力を入れている。
これまでの大学入試では、「ax+by=c 型」の問題の場合は x,y の係数の小さいものが主であったが、新課程カリキュラムでは、例えば 「71x+39y=1」のように係数が大きい場合も扱うとされている。この場合、最初の 1 個の解を見つけるのが難しく、これはこれまでの課程で高校 3 年生に説明してもなかなか理解してもらえないものである。おそらく、次の改定のときには「大きな係数」の場合は消滅するのだろう。
また、(B) の問題は、カリキュラムの中でははっきりと組み込まれてはいないが、これが出題されたときはつねに論証問題になり難しい。実際、かなり難しい問題を作ることができる。
- Dec.16
2013 - 新課程数学の基本 (3)
新課程カリキュラムの導入で多くの人に衝撃的だったのは、数学Iという必修科目に「データの分析」という統計関連の分野が入ったことだろう。かなり前に統計分野が必修化されていたときもあったが、大学入試においては試験範囲から「ただし、統計的推測は除く」と書かれていることが「普通」で大学入試範囲からは除外されていた。
しかしながら今回は数学 I の中にあるからセンター試験でも必ずと言ってよいほど確実に出題されるため、無視することはできない。
さて、この「データの分析」が、受験生にとってセンター試験だけでよいのか、2 次対策も必要なのかによって対応は異なってくる。
ちなみに、大学入試センターが発表した試作問題はここにある。
http://www.dnc.ac.jp/modules/center_exam/content0594.html
この問題についてコメントを少し加えると、この問題は「慌てて作成した」か「問題作りに慣れていない人の作品」である。それは、教科書ではあまり扱わない内容を取り上げていたり、問題文に対する慎重さが多少欠落しているところから読み取れる。
センター試験だけのことを考えれば、対策は難しくはない。また、数学 B でいわゆる「確率分布」の項目を選択する学校は皆無に近いことを考えると、「データの分析」を高 3 まで学習しなくてもとりあえずは困ることはない。
ところが、2 次試験の出題範囲となるといろいろな状況が考えられる。センター試験は原則として他分野との融合問題はない。例えば、「確率」と「漸化式」の両方の知識が必要な問題は出題できない。しかし、2 次試験の場合はそれができる。その場合、「顔はデーターの分析、中味は論証問題」ということも可能である。
簡単な例を簡単に表現すると
「全員が偏差値が 40 より大きく 60 より小さくなるような試験は存在しないことを示せ。」
(ただし, 人数は 2 以上で、全員が同じ点数である場合を除く)
のようなものもできる。
数学の教員の中には、「本当にデータの分析から出題されるの? 」とか「でないよね」と言っている人も少なくないので心配になるが、ここで記したようにデータの分析の顔をした問題は出題の可能性がある。
- Dec.15
2013 - 新課程数学の基本 (2)
前回の数学 A の話を続ける。
すでに説明したように、「数学 A」は 3 項目から 2 項目を選択すれば履修したことになる科目である。その 3 項目は
「(1) 場合の数と確率」「(2) 整数の性質」「(3) 図形の性質」
であった。
さて、この 3 つの項目であるが、3 項目から 2 項目を選ぶ「選択科目」だけにある特徴がある。それは、
「教科書の上では、(1), (2), (3) のどの分野も同じ分量になるように作られている」
ということである。
一般に、1 単位とは週 1 時間の授業を年間 35 週(つまり 35 時間)授業したときに学習し終える内容ということになっている。もちろん、現実に高校現場では年間 35 週を確保するのは厳しく、これが 32 週になったり、28 週になったりする。数学 I のような重要な教科の場合、高校現場によっては 28 週ではしっかりと終えることができないため 3 単位(数学 I は 3 単位)のところに週に 4 時間をあてて時間を確保することもある。
話を元に戻そう。文科省はカリキュラムを組むときに (1), (2), (3) がどれも同じ時間で学習できるように(カリキュラムを)組むことが要請される。するとどうなるか?
大学入試の観点から見れば (1), (2), (3) はそもそも均等な分量ではない。大学入試のためにその出題内容とそれを学習するために必要な時間の比は
(1): (2): (3) =5:3:2
くらいであろう。
となれば数学 A という 3 項目から 2 項目を選ぶ「選択科目」としては、
・(1) の場合の数と確率は、必要な内容であっても削って 1 単位分する。
・(2) の整数の性質と (3) の図形の性質は、あまり必要な内容でなくても付け加えてそれぞれ 1 単位分にする。
という処置をせざるをえない。
例えば、「場合の数と確率」では、今回の改定で期待値が削られて、代わりに条件付き確率が入った。これは、期待値が必要かどうかではなく、従来のまま期待値を盛り込むと時間がかかり、1 単位分では収まりきれなくなるからだ。そういう理由で何を学習するかは決まる部分がある。
実際、2003 年から施行されたカリキュラムもこの「期待値」は削られそうになった。そのときは、会議である女性教員が「私ならば、この時間内で期待値の学習は終わらせることができます!」という一言で「期待値」が存続されたことがその場にいた関係者から明らかになっている。
話を新課程のカリキュラムに戻す。このようにして作られたカリキュラムであるから、文科省の監視下におかれた教科書に従った学習では、大学入試のことを考えた場合
(1) は物足りない
(2), (3) はやややりすぎの部分もある
ということになる。
高校現場では、この (1), (2), (3) にどのくらいの時間を充てるかが大切である。
- Dec.14
2013 - 新課程数学の基本
新課程カリキュラムによる高校数学の授業が 2012 年 4 月から開始され、1 年 8 か月が経過した。そろそろ、新課程入試が気になるところかもしれないが、ここで新課程のおさらいをしておこう。新課程の特徴はいろいろとあるので、今回からシリーズにしていこうと考えている。
数学 A に関して
数学 A は
「(1) 場合の数と確率」「(2) 整数の性質」「(3) 図形の性質」
の 3 項目からなり、ここから任意の 2 項目を選択し 2 単位が与えられる。
例えば、ある学校では (1) と (2) を選択してその学校の生徒は数学 A を学習したことになれば、別の学校では (1) と (3) を選択して数学 A の単位を所得することになる。
ところが、ここに一つの問題が起こった。それは、数学 A を試験科目に含める多くの大学が入学試験の数学 A に (1), (2), (3) のすべてを出題範囲に含めてしまったからだ。おそらく文科省としては気分はよくないであろう。自分たちの決めたルールに従わない大学側を疎く思い、「ペーパーによる試験の廃止」で強制的に管理下に置きたくなるとしたのであればそれは危険なことである。
さて、現実に目を向けると、いくら数学 A の単位を所得できたとしても大学入試に不足するようでは困るのは高校現場である。「高校は大学進学のためにあるのではない」という時代錯誤の発言をする人もいるであろうが、それでは高校生が被害者になるだけである。数学 A はこのような状況にあり高校現場では
「数学 A を 3 単位分の時間を配当する」
「数学 A にはとりあえず 2 単位分の配当時間を与え、残りを補講などを入れて補う」
などの対策を行うところが多い。
これから、高校を選ぼうとしている中学生の保護者は、この数学 A をどのように扱っているかを調べてみることをお勧めする。学校の数学に関する熱意がある程度量ることができる。
(「数学 A に関して」つづく)
- Jul.12
2013 - よくわからない質問メモ
最近の質問
[1]
ある問題で、設問 (1) が
「すべての実数 x で e^x≧1+x が成り立つ」
であった。
次の設問(定積分の問題)は、この不等式に -x^2 をあてはめて、
e^(-x^2)≧1+(-x^2)
すなわち、
e^(-x^2)≧1-x^2
であることを利用する問題であったが、質問は
「-x^2をあてはめると -x^2≦0 じゃないですか? これではすべての実数ではないからだめじゃないですか」
というもの。
★ うーん。あてはめた式はすべて元の条件と同値である必要はないのだが・・・・
[2] 「f(x)=x^(x^2) (x>0) は x>0 においてつねに正だから、対数をとることができて、 log f(x)=log {x^(x^2)} ・・・・」
というと、
「関数が連続であることを断らなくてよいのですか?」
という質問
なぜ、連続であることを断らなければならないのだろうか。
★ 勝手な推測であるが、この質問者は何かを聞き間違えて覚えてしまったのだろう。それで、覚えるときに納得しないで頭の中に叩き込んだためおかしなことを言っても疑わずにいたのかもしれない。
(教訓) 定理・公式は一度は納得しよう!
[3] 「・・・ これですべての実数 x, h に対して |f(x+h)-f(x)|≦h^2 であることが示された。さて、次に h≠0 のときこの両辺を |h| で割ると
|(f(x+h)-f(x))/h| ≦|h| ・・・・(*)
となるので・・・・」
と説明すると
「先生! (*) は分母に h があるからすべての h で成り立たないじゃないですか!」
というもの。
★ 何とコメントしてよいのか。いわゆる混乱型の質問。