数学教育研究所 公式サイト Mathematics Education Institute Official Web Site
Dec.17
2013
新課程数学の基本 (4)

 新課程になって新しく学習することになった分野には
「データの分析」「整数分野」「複素数平面」
がある。これらは、それぞれ次の点で状況が異なる。

・「データの分析」: これまでにはない新しい分野(と言ってよいだろう)。入学試験で出題された実績も(一部の大学とセンター試験を除いて)ほとんどない。

・「整数分野」: 文科省のカリキュラムとしては新しいが、すでに大学入試では出題されてきた。大学入試においてすでに「独自の文化」が形成されてある。

・「複素数平面」: 1994 年からのカリキュラムからは導入されたが、2003 年からのカリキュラムでは消滅した。すなわち「復活した新しい分野」である。

今回は、このうちの「整数分野」について述べる。
 これまでの大学入試おける整数分野は大きく次の 4 つに大別される。

(A) 余りに関する問題 (2^100 を 7 で割った余りは何か?)
(B) 素数と互いに素に関する問題
(C) 整数解を求める問題
(D) 整数の離散性に関する問題

このうち、(C) の問題の
・ 3x+4y=1 を満たす整数 (x,y) の組を求めよ。
・ xy+2x+4y-7=0 を満たす整数 (x,y) の組を求めよ。
程度であれば、パターン暗記でも太刀打ちできるから数学が苦手な生徒でもある程度は何とかなる。新課程では、この(C)に力を入れている。
これまでの大学入試では、「ax+by=c 型」の問題の場合は x,y の係数の小さいものが主であったが、新課程カリキュラムでは、例えば 「71x+39y=1」のように係数が大きい場合も扱うとされている。この場合、最初の 1 個の解を見つけるのが難しく、これはこれまでの課程で高校 3 年生に説明してもなかなか理解してもらえないものである。おそらく、次の改定のときには「大きな係数」の場合は消滅するのだろう。

また、(B) の問題は、カリキュラムの中でははっきりと組み込まれてはいないが、これが出題されたときはつねに論証問題になり難しい。実際、かなり難しい問題を作ることができる。

Dec.16
2013
新課程数学の基本 (3)

 新課程カリキュラムの導入で多くの人に衝撃的だったのは、数学Iという必修科目に「データの分析」という統計関連の分野が入ったことだろう。かなり前に統計分野が必修化されていたときもあったが、大学入試においては試験範囲から「ただし、統計的推測は除く」と書かれていることが「普通」で大学入試範囲からは除外されていた。
 しかしながら今回は数学 I の中にあるからセンター試験でも必ずと言ってよいほど確実に出題されるため、無視することはできない。
 さて、この「データの分析」が、受験生にとってセンター試験だけでよいのか、2 次対策も必要なのかによって対応は異なってくる。

ちなみに、大学入試センターが発表した試作問題はここにある。
http://www.dnc.ac.jp/modules/center_exam/content0594.html
この問題についてコメントを少し加えると、この問題は「慌てて作成した」か「問題作りに慣れていない人の作品」である。それは、教科書ではあまり扱わない内容を取り上げていたり、問題文に対する慎重さが多少欠落しているところから読み取れる。

センター試験だけのことを考えれば、対策は難しくはない。また、数学 B でいわゆる「確率分布」の項目を選択する学校は皆無に近いことを考えると、「データの分析」を高 3 まで学習しなくてもとりあえずは困ることはない。
 ところが、2 次試験の出題範囲となるといろいろな状況が考えられる。センター試験は原則として他分野との融合問題はない。例えば、「確率」と「漸化式」の両方の知識が必要な問題は出題できない。しかし、2 次試験の場合はそれができる。その場合、「顔はデーターの分析、中味は論証問題」ということも可能である。
簡単な例を簡単に表現すると
「全員が偏差値が 40 より大きく 60 より小さくなるような試験は存在しないことを示せ。」
(ただし, 人数は 2 以上で、全員が同じ点数である場合を除く)
のようなものもできる。

 数学の教員の中には、「本当にデータの分析から出題されるの? 」とか「でないよね」と言っている人も少なくないので心配になるが、ここで記したようにデータの分析の顔をした問題は出題の可能性がある。

Dec.15
2013
新課程数学の基本 (2)

 前回の数学 A の話を続ける。

 すでに説明したように、「数学 A」は 3 項目から 2 項目を選択すれば履修したことになる科目である。その 3 項目は
「(1) 場合の数と確率」「(2) 整数の性質」「(3) 図形の性質」
であった。
 さて、この 3 つの項目であるが、3 項目から 2 項目を選ぶ「選択科目」だけにある特徴がある。それは、
「教科書の上では、(1), (2), (3) のどの分野も同じ分量になるように作られている」
ということである。
 一般に、1 単位とは週 1 時間の授業を年間 35 週(つまり 35 時間)授業したときに学習し終える内容ということになっている。もちろん、現実に高校現場では年間 35 週を確保するのは厳しく、これが 32 週になったり、28 週になったりする。数学 I のような重要な教科の場合、高校現場によっては 28 週ではしっかりと終えることができないため 3 単位(数学 I は 3 単位)のところに週に 4 時間をあてて時間を確保することもある。
 話を元に戻そう。文科省はカリキュラムを組むときに (1), (2), (3) がどれも同じ時間で学習できるように(カリキュラムを)組むことが要請される。するとどうなるか?
大学入試の観点から見れば (1), (2), (3) はそもそも均等な分量ではない。大学入試のためにその出題内容とそれを学習するために必要な時間の比は

   (1): (2): (3) =5:3:2
くらいであろう。
となれば数学 A という 3 項目から 2 項目を選ぶ「選択科目」としては、
 
・(1) の場合の数と確率は、必要な内容であっても削って 1 単位分する。
・(2) の整数の性質と (3) の図形の性質は、あまり必要な内容でなくても付け加えてそれぞれ 1 単位分にする。

という処置をせざるをえない。
例えば、「場合の数と確率」では、今回の改定で期待値が削られて、代わりに条件付き確率が入った。これは、期待値が必要かどうかではなく、従来のまま期待値を盛り込むと時間がかかり、1 単位分では収まりきれなくなるからだ。そういう理由で何を学習するかは決まる部分がある。
実際、2003 年から施行されたカリキュラムもこの「期待値」は削られそうになった。そのときは、会議である女性教員が「私ならば、この時間内で期待値の学習は終わらせることができます!」という一言で「期待値」が存続されたことがその場にいた関係者から明らかになっている。
話を新課程のカリキュラムに戻す。このようにして作られたカリキュラムであるから、文科省の監視下におかれた教科書に従った学習では、大学入試のことを考えた場合
(1) は物足りない
 (2), (3) はやややりすぎの部分もある
ということになる。
 高校現場では、この (1), (2), (3) にどのくらいの時間を充てるかが大切である。

Dec.14
2013
新課程数学の基本

 新課程カリキュラムによる高校数学の授業が 2012 年 4 月から開始され、1 年 8 か月が経過した。そろそろ、新課程入試が気になるところかもしれないが、ここで新課程のおさらいをしておこう。新課程の特徴はいろいろとあるので、今回からシリーズにしていこうと考えている。

数学 A に関して
 数学 A は
「(1) 場合の数と確率」「(2) 整数の性質」「(3) 図形の性質」
の 3 項目からなり、ここから任意の 2 項目を選択し 2 単位が与えられる。
例えば、ある学校では (1) と (2) を選択してその学校の生徒は数学 A を学習したことになれば、別の学校では (1) と (3) を選択して数学 A の単位を所得することになる。
ところが、ここに一つの問題が起こった。それは、数学 A を試験科目に含める多くの大学が入学試験の数学 A に (1), (2), (3) のすべてを出題範囲に含めてしまったからだ。おそらく文科省としては気分はよくないであろう。自分たちの決めたルールに従わない大学側を疎く思い、「ペーパーによる試験の廃止」で強制的に管理下に置きたくなるとしたのであればそれは危険なことである。
さて、現実に目を向けると、いくら数学 A の単位を所得できたとしても大学入試に不足するようでは困るのは高校現場である。「高校は大学進学のためにあるのではない」という時代錯誤の発言をする人もいるであろうが、それでは高校生が被害者になるだけである。数学 A はこのような状況にあり高校現場では
「数学 A を 3 単位分の時間を配当する」
「数学 A にはとりあえず 2 単位分の配当時間を与え、残りを補講などを入れて補う」
などの対策を行うところが多い。
これから、高校を選ぼうとしている中学生の保護者は、この数学 A をどのように扱っているかを調べてみることをお勧めする。学校の数学に関する熱意がある程度量ることができる。
(「数学 A に関して」つづく)

Jul.12
2013
よくわからない質問メモ

最近の質問

[1]
 ある問題で、設問 (1) が
「すべての実数 x で e^x≧1+x が成り立つ」
であった。
次の設問(定積分の問題)は、この不等式に -x^2 をあてはめて、

   e^(-x^2)≧1+(-x^2)
すなわち、
   e^(-x^2)≧1-x^2

であることを利用する問題であったが、質問は
「-x^2をあてはめると -x^2≦0 じゃないですか? これではすべての実数ではないからだめじゃないですか」

というもの。

★ うーん。あてはめた式はすべて元の条件と同値である必要はないのだが・・・・

[2] 「f(x)=x^(x^2) (x>0) は x>0 においてつねに正だから、対数をとることができて、 log f(x)=log {x^(x^2)} ・・・・」
というと、
「関数が連続であることを断らなくてよいのですか?」
という質問

なぜ、連続であることを断らなければならないのだろうか。

★ 勝手な推測であるが、この質問者は何かを聞き間違えて覚えてしまったのだろう。それで、覚えるときに納得しないで頭の中に叩き込んだためおかしなことを言っても疑わずにいたのかもしれない。
(教訓) 定理・公式は一度は納得しよう!

[3] 「・・・ これですべての実数 x, h に対して |f(x+h)-f(x)|≦h^2 であることが示された。さて、次に h≠0 のときこの両辺を |h| で割ると
   |(f(x+h)-f(x))/h| ≦|h|   ・・・・(*)
となるので・・・・」
と説明すると
「先生! (*) は分母に h があるからすべての h で成り立たないじゃないですか!」
というもの。

★ 何とコメントしてよいのか。いわゆる混乱型の質問。

Jul.11
2013
駿台教育セミナー「東京大学入試数学研究」テキスト訂正のお知らせ

 今年の夏に実施される駿台教育セミナーには多くの教員の方々が参加されることになりありがとうございます。

 その講座の一つである「東京大学入試数学研究」のテキストに誤りがありました。申し訳ございません。この場でも訂正させていただきます。

p.6 (1) の 2 行目の最右辺
(誤) (3y+1)^x
(正) (3y+1)x^2
となります。
すでに誤植のままとき貴重な時間を費やしてしまった方もいらっしゃるかと思います。重ね重ねお詫びします。

また、何か新情報があればこの場で連絡いたします。

清 史弘

Jun.26
2013
駿台教育セミナー増設のお知らせ

今年の夏期に行われる駿台教育セミナーで、私が担当する「東京大学入試数学研究」が増設されることになりました。
これは、8/12 の東京会場の講座が満員に達したために、8/13に増設するものです。

学校改革を行い生徒数を増やすためにいろいろな試みがいくつかの高校でされていますが、やはりインパクトがあるのが「東大合格数○○名」というものです。
このようなものがはたして学校の良し悪しをどこまで表しているかは疑問ですが、何しろ大変わかりやすい表現でそれなりに学校の様子を表しているものなのです。
そのため、たとえ一人、二人が東大受験する場合でも、その高校ではその一人、二人のためにケアするのはそれだけの価値があるわけです。
では、どうすればよいかというと、まず教員が東大数学をある程度知っていることなのです。大ざっぱな傾向ではなく、一歩ではなく5歩、6歩も踏み込んだ解説を行う講座です。
教員の方で興味のある方は8/13 の方のセミナーに参加してください。

Jun.26
2013
誤った学習をしている人の典型例

生徒の質問を聞いていると、その質問内容から、その質問事項というピンポイントの問題ではなく、そのような質問をするに至った大きな過ちが見えることもある。

最近、次のような質問を受けた。
数学IIIの漸化式で与えられる数列の極限の問題。

a_{n+1}=1/2 a_{n}+1/a_{n}
a_{1}=1

という漸化式。まずは、解答を説明したあと生徒は次のように質問に来た。

「先生、特性方程式のやりかたでよいですか?」

最初何のことかよくわからなかった。それで、もう少し詳しくと言うと、漸化式のa_{n+1} と a_{n} をともに x におきかえて

x=1/2 x+1/x

とする。これを解き, x>0 の範囲の解を求めると√2 になる。したがって、漸化式は

(★) a_{n+1}-√2 =1/2 (a_{n}-√2)   (←正しくはありません)

となるというのだ。
この理屈もよくわからなかった。そこで、生徒と話をしても話が通じない時間が数分あり、その数分後に生徒の主張がようやくわかった。それは、

a_{n+1}=pa_{n}+q
という漸化式の場合、 x=px+q をとく。そして、その解をαとすると漸化式は

a_{n+1}-α=p(a_{n}-α)

と変形できる。だから、最初の漸化式の場合も同じようにできて (★) が得られるのではないかということだった。

さて、これだけの質問でこの人は数学を最悪の勉強方法で行っていることがわかる。
つまり、すでに知っているとされる漸化式 a_{n+1}=pa_{n}+q を x=px+q を解いて
  a_{n+1}-α =p(a_{n}-α)
となることを全く理解せずに、形式的にただ覚えているだけなのだ。漸化式をこのように変形できるということを理解しようという姿勢はおそらくない。ただ、解くための手順を丸暗記しただけにすぎないのである。
だからこのような質問をしてしまう。数学を舐めているといわれても仕方ない学習姿勢なのだ。
数学ではよくわからないものを平気で結果だけ使って解こうという姿勢は最悪なのである。

Jun.19
2013
クリープを入れないコーヒーなんて

 もう 35 年も前のこと。中学 1 年の私は, 生徒会の事務局(生徒会長・副会長を含むグループ)に立候補することになった。それ以前は学級代表を務めていて, 学級を代表して立候補した感もある。対立候補は隣のクラスの女子であったが, 当選するかどうかは私自身はよくわからなかった。投票前の立会演説会の原稿を書いていたとき, クラスメートが「真面目に訴えるだけではだめ。笑いをとらないと・・・・」とアドバイスのようなものをくれた。

「クリープを入れないコーヒーなんて」

これは, 当時流行っていたコマーシャルの決め台詞。これを用いた。これは, 「私を入れない事務局なんて」をこの決め台詞のようだと言っただけあるが, なぜかうけて笑いをとることができた。中学の選挙は印象に残ったものが勝つようなところもあるので, 私はこれで当選できた。

さて, 余談はここまでにして本論に入る。

最近, 塾・予備校の先生, 高校の先生と話をしていてどうやら勘違いをしているのではないかと思えることがある。それは,

「教員は, 授業をすることが第 1 の仕事である」

ということを忘れているのではないかと思える人が多いことだ。生徒の悩みを聞いてあげたり, 生徒の生活態度を指導したり, ときには友達目線?にたってあげたり・・・・このようなことをするのはよいことかもしれない。しかし, それが教員の第 1 の仕事ではないはずだ。中には, (授業はきちんとしていないのに)生徒の悩みを聞いてあげているから自分はよい先生だと思っている教員もいて困る。これは, 先ほどの決めセリフのように言えば,

「勉強を教えられない教員なんて」

ということになる。
 この「勉強を教えられない教員」の特徴としては, 「すぐに問題の解答を見る」あるいは「すぐに問題の解答を探す」というものがある。例えば, 今, 私はいろいろな箇所で数学の問題を提示したりする。それには, 簡単な因数分解もある。
 「(a+b-c)(a+b) を展開せよ。」
このようなものもある。これは生徒にハードルの低い問題で習慣づけさせることが大切だという話であるが, このようなものであっても
 「解答をいただけないか」
とくる。また, 予備校のテキストなどでも「解答をよこせ」と怒って要求してくる人もいる。本人達は気がつかないのだろうが, 解答を欲している教員ほど情けなく見える状況はない。
 昔, 私が務めていた塾では, テキストの解答などはなかった。しかも, テキスト作成者の独特な考え方が含まれているものや, 高校数学の範囲を超えた問題, それに問題に不備があって解けない問題もあったので授業の予習はものによっては大変苦労した。しかし, 解答がないから講師の力は担保でき, 結局, 塾の先生の水準を保つこともできたのだと思う。

 教育の質を保ち続けるためにも, 教育者の人たちはこの教員としての原点を忘れないでもらいたい(と言いたい人が多くいる)。

 「担当教科を教えられない教員なんて(いらない)」

である。

Jun.11
2013
学校再建の手法

昨今、少子化の影響を受け私立中学・高等学校および大学、あるいは公立の学校までも募集に苦労している様子が伺える。これに目をつけて「学校再建ビジネス」があるのをご存じだろうか。
 実は、学校再建に成功した例は大きく2つに大別できる。それは、
[1] 外部主導型

[2] 内部主導型
である。
 [1] 外部主導型は、銀行やそれなりのブローカーがある。手法はいたってビジネスライクである。ニンジンをぶら下げ教員達をよく言えば「やる気を起こさせる」、悪く言えば「煽る」方法で何とかしようとする。そんな方法でうまくいくのかと思う方もいるかもしれないがいくつかの成功例はある。(学校名を出すのは遠慮しておく) しかし、内心, 教員達の反発は大きいから実は成功の陰で問題も起こっている。
[2] の内部主導型は、校長、副校長あるいは教頭に有能な人がいる場合にいくつかの例がある。この場合は、教員に一体感を保ちうまくまとめあげ、よい雰囲気のもと学校が再生する。

 成功したかどうかは別として、[1],[2]のどちらの方法で取り組んでいるかだけで言えば、かなりの割合で[1]ではないだろうか。[2]はカリスマ的教員の存在がその学校に必要だからなかなか難しい。[1]の場合に気になるのは、教育の質を無視した行動も目に付くところだ。もちろん、その学校の良い点を外にアピールする力は、その点について素人である普通の教員よりはかなりよいので、このような点は十分に参考にはなるのだが。

また、[1]の人の場合、「生徒数が増えれば給料を上げると言えば、教員は頑張るだろう。それで頑張らない教員は●●だ」のようなことまで言い張る。しかし、教員心理としては「給料を上げてほしいから頑張るのではない。生徒を育てる喜びがあるから頑張るのだ」という。[1]型の「立て直し屋」にはこの教員心理を理解できない人が多く、ニンジンさえぶら下げれば教員達は真剣に頑張ると思っている。一方で、「給料を上げてほしいから頑張るのではない」と言い張る教員には、自分の授業に妙に自信をもちすぎて、外部からの意見を全く聞かなくなってしまった人もいる。これはこれで困りものである。
[1]型の「立て直し屋」には、教育の質がまったくわからない人が多いし、そんな質は関係ないと思う人も少数ではない。高校の現場では、数学IIIを苦手とする数学の教員も珍しくないし、また、平気で「ウソ」を教えている教員もいる。生徒にアンケートでもとって評判が悪ければその教員を叩けばよいなどと思っている人もいて、それは間違った方法である。

私は、個人的には[2]のタイプの内部主導型を応援したいと思う。だから、私の場合は数学の教員の少しでも役に立ってもらえるように、教員用のセミナーを開き、そのために呼ばれれば地方にも出向いている。(今年度も、当社のHPから数件の依頼があった。)
このことは、日本の数学のレベルを大きく上げることにもなり、学校再建という日本全体の視野から見れば小さい問題よりもかなり壮大なことである。

最後に学校再建については[1]でもなく[2]でもない方法として、学校教員のプロ、教育のプロを一定期間派遣し、現場の先生を主導していく方法が考えられるだろう。現場の先生が役に立たないというのではない。外からの刺激を受けるべきだということである。

最近、[1]型の人と話をする機会があったが、教員を「もの」か「道具」としか見ていないのが気になった。他の企業の再建とはちょっと違うのではないかと私は思う。一般企業では、ダメ社員を発奮させるために、「ニンジン作戦」や「罵ったり」するかもしれない。しかし、学校では、「ニンジンを見せられた人」「罵られた人」が生徒を教育するので生徒にも影響はあることだろう。そこが、一般企業と学校現場の大きな違いである。

※ 教員の方で、うちの学校は、今、[1]型、あるいは[2]型の改革をやっているというのがあれば、成功・不成功に関わらずどのような状況であるかを報告してくれませんか。もちろん学校は匿名で構いません。この場で頂いた意見を紹介します。