ここ 40 年の高校数学のカリキュラムは大きな変化がありました。一般に物理, 化学, 生物等の理科は, 日進月歩の世界ですので 30 年前, 場合によっては 10 年前のものは「古い」ということは珍しくありません。それに対し, 数学は 100 年前に証明されたことが現在でも通用する学問です。このように変化の多い「理科」と変化の少ない「数学」ですが, 日本の高校数学のカリキュラムは理科以上に変化します。
数学教育研究所では, 恒常的に数学および理科のカリキュラムの研究も行なっていますが, 数学のカリキュラムに対しては「現行課程」「旧課程」「旧々課程」等の名称では混乱すると考えました。そこで, 現在からみた「相対的な名称」ではなく「絶対的な名称」も必要と考え次のように名づけました。当面, 次の名称でそれぞれの課程を呼び, 話を進めていきたいと思います。。
1. 昭和 57 年(1982 年)入学者からのカリキュラム 「分野分離カリキュラム」
主な特徴: それまでの I,IIB,III から, 「代数・幾何」「基礎解析」など分野ごとに分かれた。
2. 平成 6 年 (1994 年)入学者からのカリキュラム 「ゆとりカリキュラム」
主な特徴: その名の通り「ゆとり」を全面に打ち出し, 大幅に内容が減らされた。このカリキュラムから現行のI,II,III,A,B,C という名称が使われた。
3. 平成 15 年 (2003 年)入学者からのカリキュラム 「ゆとり修正カリキュラム」
主な特徴: 「ゆとりカリキュラム」のやりすぎに疑問をもつものの, 一度定めた方向は変えにくく, 基本的には「ゆとりカリキュラム」の考えを踏襲しつつ, 厳しい制限を緩めた。
4. 平成 24 年 (2012 年)入学者からのカリキュラム 「脱ゆとりカリキュラム」
主な特徴: 表現はともかく, 実質的には「ゆとり」の名による学習量減少を否定した内容になった。戦後初めて, 前回よりも内容量が増えたことは大きな特徴である。また, 「データの分析」(統計分野)が必修科目になるなどの特徴がある。
5. 平成 35 年 (2023 年)入学者からのカリキュラム 「アクティブカリキュラム」
主な特徴: 現段階では, 正式なものは発表されていない。ただし, 学習指導要領がきちんと実施されていないとか生徒が受け身の教育ではよくない, 自ら考える判断する教育を目指すことから「アクティブ・ラーニング」という用語が多用されるようになった。これにより, 従来の指導要領では学習内容を中心に言及していたものを, 指導の方法にまで踏み込んだ点が特徴的である。ただし, この内容は今後変化する可能性があることも言及しておく。
この名称は今後皆様からよい名称が提案されれば修正していきたいと考えています。