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Dec.07
2015
計算のエチュード 基礎編 1 (解答編)


まず, 解答を記します。その後でこの問題の出題意図と人によっては反省材料をお知らせします。
 
【問題 A – 1 】の解答です。
 
(1) \( (x^{2}+3x)^{2}+5x^{2}+15x-14=(x^{2}+3x)^{2}+5(x^{2}+3x)-14\)
        \( =\{(x^{2}+3x)+7\}\{(x^{2}+3x)-2\} \)
        \(=(x^{2}+3x+7)(x^{2}+3x-2)\)
 
(2) \(f(x)=-\left(\displaystyle\frac{1}{\,x\,}-\frac{1}{\,2\,}\right)^{2}+\displaystyle\frac{1}{\,4\,}\)
 
となるから, \(f(x)\) は \( x=2\) のとき最大値
    \( \displaystyle\frac{1}{\,4\,}\)
をとる。
 
(3) 与えられた方程式は,
 
     \( (x+2)+3\sqrt[3]{x+2}-4=0 \)
 
となる。\( \sqrt[3]{x+2}=X\) とおくとこれは,
 
     \( X^{3}+3X-4=0\)

となるから, これを実数の範囲で解くと,
 
     \( (X-1)(X^{2}+X+4)=0 \)
 
ここで, 2 次方程式 \( X^{2}+X+4=0\) は \( (判別式)=1^{2}-4\cdot 4=-15\lt 0\) より実数解をもたない。よって, \( X=1\) のときの
 
     \(\sqrt[3]{x+2}=1\)
     ∴ \( x=-1\)
 
が与えられた方程式の実数解である。

【解説】
 今回は, 「数式を塊で見ることができるか」あるいは「数式の構造をとらえられることができるか」というのがテーマです。数式を最初に見たときにどのような構造をしているかを早い段階で把握できるかどうかが問われています。
 計算力が弱い人には,
 
       展開癖

が多いという特徴があります。これは, 数式を見るととりあえず展開してしまう悪い癖です。数式は展開することで特徴が見えにくくなり, またその後の収拾がつかなくなることもよくあります。もちろん展開しなければ先に進まないことも多くありますが, むやみに展開すればよいというわけではありません。数式を展開する前にすることがあるということです。

(1) では、\( (x^{2}+3x)^{2}\) を展開してしまった人は要注意です。その後に続く \(+5x^{2}+15x\) を見て, この部分を \(+5(x^{2}+3x)\) とすることが気がつくべきでしょう。
 
(2) では, \(f(x)\) が \(□-□^{2}\) の形をしていることに気がついてもらいたいと思います。その後の作業は平方完成です。
 
(3) は \( \sqrt[3]{x+2}\) があることによって, \(x=(x+2)-2\) と見て, \( x+2=(\sqrt[3]{x+2})^{3}\) ととらえたい問題です。もちろん \(\sqrt[3]{x+2}=-x+2\) と変形して両辺を 3 乗する方法もあります。

Dec.06
2015
計算のエチュード 基礎編 1 (問題編)


計算のエチュードの基礎編では, 数式を扱う根本の練習を行ないます。
問題編ではあるテーマに基づいて問題を出しますので、まず各自問題を解いてみてください。解答は原則として翌日に掲載します。

また, 書籍「計算のエチュード」が販売されています。ここに書いてある内容がすべて盛り込まれています。ご一読ください。

【問題 A – 1】
(1) 次の多項式を係数が有理数の範囲で因数分解せよ。

\( (x^{2}+3x)^{2}+5x^{2}+15x-14\)

(2) 次の関数の最大値を求めよ。

\( f(x)=\displaystyle\frac{1}{\,x\,}-\displaystyle\frac{1}{\,x^{2}\,}\)

(3) 次の方程式の実数解を求めよ。

\( x+3\sqrt[3]{x+2}-2=0 \)

Dec.02
2015
第8回高大接続システム改革会議に関して

2015年11月30日に高大接続システム改革会議いわゆる有識者会議が開かれた。
これについてはすでに NHK などのメディアでの報告があるものの、個人的にはこの報告ではやや弱い感じがするので、私個人の感じた部分 (★印のある部分をつけた) も含めて解説する。
なお、文章の中で書かれている内容が不適当(例えば非公開にすべきもの)などがあれば、連絡を頂ければ速やかに削除する。また、★印部分は私の個人的な感想なので発言者からすれば「そうではない」と言いたくなる部分もあるかもしれない。それを踏まえた上でよんでいただきたい。★部分以外で事実と異なる部分があるのであれば速やかに修正をする。

14:00 から文科省の3階1特別会議室で 16:00 までの予定で行われた。この手の会議は、時間厳守のようで、延長は決していないようだ。そのため、以下の2つの議題のうち 1 に時間がかかり 2 の方は 20 分程度しか話されなかった。
今回の議題は次の 2 つである。
1. 多面的な評価検討ワーキンググループにおける審議の進捗状況
2. 「大学入学希望者学力テスト (仮称)」について

★ 傍聴者の大半の期待は 2 の方だったと思う。1 の話のときは私のまわりには大きくいびきをかいて寝ている人たちもいた。

14:00 に開始された会議であるが、しばらく文科省側から配布物の説明が続く。実は、傍聴者への配布資料(資料2-1)が一つ足りなくて、傍聴席がざわつくが、文科省側の説明進められた。文科省からの説明は指導要録の変更点などが主だった。

★ したがって、資料2-1に関する話は傍聴者にはよく理解されなかったと思う。そういうこともあって、NHK の記事にも資料2-1の部分は触れられていない。

14:40 から議題 1 についての議論が開始された。
前半は、高校生の学力をどのように評価するかに時間が使われた。例えば、指導要録の項目についても、小学校の場合は具体的であるのに対し、高校は具体的項目が少なく、自由欄が多い。これに対し、これでは高校が違えば平等な評価ができないのではという意見もあったが、それに対しては、高校は小学校と異なり学習の幅が広い。つまり、普通科もあれば音楽学校のようなものもある。これらを同じくくりで評価するのは困難であるという回答であった。また、調査書については、高校は多様である。むしろ、これまでは多様化を目指してきたという側面がある。したがって、高校生を一種類の評価基準の枠に入れるのは問題があるとの考えも出た。ただ、これでは大学側に信頼される調査書にならない。大学側もこの調査書を使いたいと思わなくなるとのこと。
また評定についてはも高校によっては、5段階の 5 または 4 の評定がほぼすべてのようなところもあり、これでは高校生の能力の差別化になっていないので、これが高校の評定が信頼されない原因でもあるという意見も出た。
中には、企業の採用面接で行われる「エントリーシート」(自己 PR シートのようなもの)を高校生に書かせるとどうかという意見もあった。これは、受ける大学の志望理由や将来の夢、目標を書かせるというものでこれが大学側の判断に効果があるのではないかというものである。

★ 最後の意見は某企業の方と某公立高校の校長の発言である。これに関しては私は的外れだと感じた。
・企業の入社面接であれば、その企業を受ける理由がはっきりしている。しかし、大学の場合はまだ定まらない人も結構多い。まして、大学の志望理由として、「東大に入れないからこちらの大学にした」のようなものもあるだろう。そういう人もそこの大学で夢をかなえれば問題がないと思うが、志望理由としては書くのは難しいだろう。そういう大学のエントリーシートには、受験生の多くは「嘘」を書くことになる。
・理数系の優れた研究者になる人には、大学入学時では自己アピールが下手な人も少なくない。教室では目立たなく控えめな人でも、優れた才能を持っている人は多い。口先だけの雄弁さだけが取り柄の人が有利になるかもしれない制度はいかがなものかと思う。

「エントリーシート」については、おそらくこれを指導する人たちが出てくるだろう。そうなっても意味のあるものを作っていきたいとのこと。
また、高校生の評価について、「こういうことを評価する」と言えば、それが高校生を型にはめることになるのではという意見があった。

★ 例えば、数学オリンピックで入賞するというのであれば、なかなかできないことであるが、何かのボランティア活動をしたら評価するというのであれば、高校生をそちらに誘導することになってしまう。結果、型にはめてしまうという考え方。
この「エントリーシート」に対し、「エントリーカード」というものを提案する人もいた。これは教員が書き込むもので、これを作ってはどうかという意見も出た。そこに生徒の日常的な評価を普段から書き込んでいくとよいとのこと。日常的にコツコツためこんでいくのは手間ではないという。
また、電子化してそれを中学から高校、大学につないで行けばどうかという話もでた。

★ 「手間ではない」というが、私は大変な手間だと思う。その感覚が私にはわからない。ちなみにこれの発言者は都内の小学校の校長。

これ以外にも細かなものはあった。例えば、マイナスの評価も書くべきなど。
15:40 になり、議題2の大学入学希望者学力評価テスト(仮称)の話題になる

★ ちなみに前々回のときに、「そろそろこのテストの名称の (仮称) を取りましょう」という発言もあったが、この日もついたままだった。
多くの傍聴者はこの部分の話を聞きたかったのだろうが、残り時間20分では、あまり深くは話せない。すぐに、具体的なことは次回という話がでた。次回のときに具体的なものを用意するとのこと。この発言から現在の進捗状況が読めるが、今はあまり触れないことにする。

この議論が始まるとすぐに、これまで発言のなかった東大の五神総長から実質的な発言があった。それは次のようなもの。
(a) 50万人の試験にどのくらいの自由度をもたせた試験が許されるのだろうか。
(b) センター試験の中にも思考力を測るのに適した問題があったはずだ。それをまず検証することが大切だ。過去の良問をもう一度検討すべきだ。
(c) センター試験は思考力を見る方法も蓄積されているのでは?
(d) 記述式になるとマークシートと違い多様な解答があるので、「まちがっている」「あっている」の二者択一ではなく、その中間も存在する。それを評価しないようではまずい。

★ 本日の発言の中で最も的を得て、しかも合理的、建設的な意見であると感じた。
(a) については、50万人の試験を記述で行うのは大変だ。記述試験の中には狭い範囲のぶれで済むものもあれば、まったく自由な解答があるものもある。例えば、「あなたの一番の思い出と理由を書きなさい」のような問題があったとすれば、多種多様でどう評価すればよいのかは難しい。それに対し、ある程度答が予想されるような記述もある。どのくらいのものをどのくらいの覚悟で行うのかを問う質問であると感じた。
(b),(c) これまで、「センター試験は廃止!」ということをスローガンとして大きく上げてきた経緯がある。そんなにすぐに「廃止」と言ってもいいの? ということかもしれない。センター試験にもよい問題はあり、これまでのノウハウの蓄積は貴重である。それをセンター試験はマークシートだからとか、マークシートでは学力は測れないと決めつけて、センター試験を「悪者」にした感じであるが、まず、たとえセンター試験が悪かったとしてもセンター試験の反省がきっちりなされないといけないのではという意見である。
(d) 記述形式の試験という一つの「夢」を追っているが、記述試験にはできたかできないかではなく、「中間点」という評価が必要になる。その評価を懸念している発言であろう。
この後、安西座長から、「思考力」には「演繹的思考力」と「帰納的思考力」があり、今はどちらを見ているのかがわからない状態にある。
また、今のセンター試験では、「この中に必ず正解がある」という仮説のもとに成り立っているが、それがあるかないかでは問題は大きく違うという発言があった。

★ これは、現在のマークシート式のセンター試験の足りない点を述べたのだと思う。だから改革が必要なのだと。

この後、ある委員から、「1 回の試験による選抜だと試験対策ができてしまう。」
という発言もあった。

★ 話し方からして、「試験対策」をする人としてもちろん高校教員もあるが「受験産業」が絡んできて、そこが今回の改革をぶち壊してしまうというようなニュアンスも感じた。

このあたりで時間になり解散となる。

当サイトでは、日本の教育改革に取り組んでいます。次回の報告もできるようであればします。

Dec.01
2015
穴埋め式と記述式の問題の問える力の違い

2021年(2020 年度) にセンター試験が廃止され, 大学入学希望者学力評価テストが実施される予定になっている。その際, 「記述式」の試験を導入し, より細かく受験者の力を把握しようという考えがある一方, それは実施が難しいからということで「マークシートでも十分」という意見もある。

さて, マークシートで試せない力を一つあげよう。それは場合分けに関する問題にある。ちなみに, 場合分けは高校数学の中で重要な要素である。

まず, 次のような問題考えよう。

【問題 1 】
西暦 X 年 (2000<X<2100) の 2 月 1 日は日曜であった。この年の 3 月 1 日は何曜日であるか。

少し考えると, 3 月 1 日が日曜の場合と月曜の場合があることがわかる。そして, どのような場合に 3 月 1 日が月曜になるかもわかるであろう。
記述式の場合は, この問題の答は次のようになる。

X が 4 の倍数のときは月曜日, X が 4 の倍数でないときは日曜日

これを穴埋め方式にすると

X が ( ア ) のときは月曜日, X が ( イ ) のときは日曜日となる。
( ア ), ( イ ) を埋めよ。

このような感じで場合によっては選択しを与えることもある。

さて, 記述式と穴埋め式の大きな違いは, 「場合分けがあるということを自分で気がつくことができるかどうかを問えるか」ということである。穴埋め式の場合は, 「この問題は場合分けがあるよ」ということを教えてくれる。しかし, 記述式の場合は自分自身で場合分けがあることに気がつかなければならない。これは大きな違いである。こういう力を穴埋めで問うのは厳しい。

例えば, 次のような問題を考えてみよう。
【問題 2 】
動点 P が数直線上を次のように動く。
・最初は原点 O にいる。
・さいころを投げ, 偶数の目が出れば点 P は +1 だけ移動し, 奇数の目が出れば -1 だけ移動する。
\(n\) 回後に点 P が原点 O にある確率を求めよ。

この問題も \(n\) が偶数と奇数の場合で分けて答えた方がよいということに自分で気がつかなければならない。しかし, 穴埋めでは「場合分けのある問題だよ」ということを教えてくれる。これでは, 問題の存在価値も半減してしまう。
場合分けのある問題は, どのように場合分けをして考えると効率が良いということを考えることもときには力のいる作業だったりする。やはり, このあたりの力を試すには記述式がかなり向いている。問題は, 記述式の答案をどう評価するかである。記述式にしたとたんいろいろな解法に対する採点基準を用意しておかなければならない。全国規模で行うときに, 公平性が問題になる。

Nov.30
2015
高校数学の似て非なる問題に対し深い意識を持とう (3) - 解答編 2 –

昨日の続きです。
(2) の解答は次のようになります。

 まず, 10 個のボールを 3 人に分配する方法全体(もらわない人がいても可)は全部で,
  \(3^{10}=59049\) (通り)
あります。ここから, ボールをもらわない人がいる場合を除いていきます。
 まず, 1 人の人がすべてのボールをもらう場合は 3 人のだれがすべてをもらうかを考えることで 3 通りになります。
 次に, 3 人のうち 2 人だけがボールをもらう場合は,
  どの 2 人がもらうか・・・ \(_{3}\mbox{C}_{2}=3\) (通り)
であり, 仮に 3 人のうち A と B がもらうとして(他の組でも以下は同じ), A と B だけがボールをもらう方法は,
  \(2^{10}-2=1022\) (通り)
となります。上の式で最後に 2 を引いているのは, A が全部とる場合と B が全部とる場合の 2 通りの分です。
 したがって, 3 人のうち 2 人だけがボールをもらう場合の数は,
  \(3\times 1022=3066\) (通り)
となります。
 以上より, 求める場合の数は,
   \(59049-3-3066=55980\) (通り)
です。

Nov.29
2015
高校数学の似て非なる問題に対し深い意識を持とう (3) - 解答編 1 –

(1) A, B, C がもらうボールの個数を \(x\), \(y\), \(z\) とおきます。このとき,
   \(x+y+z=15\), \(x\geqq 1\), \(y\geqq 2\), \(z\geqq 2\)
が成り立ちます. これを満たす整数 \(x\), \(y\), \(z\) の組の個数を求めればよいのですが, \(x\), \(y\), \(z\) によって条件が異なるので次のように工夫します。
 まず最初に A に 1 個, B に 2 個, C に 3 個与えておき, 残り 9 個を A, B, C に分配します。残り 9 個の分配の方法は,
  \(x+y+z=9\), \(x\geqq 0\), \(y\geqq 0\), \(z\geqq 0\)
満たす \(x\), \(y\), \(z\) の組の個数だけありますが, これは, ○ を 9 個並べそれを 2 つの | で仕切る方法だけありますので,
  \(\displaystyle\frac{(9+2)!}{9!\cdot 2!}=\frac{11\cdot 10}{2\cdot 1}=55\) (通り)
だけあり, これが与えられた条件のもとで 15 個のボールを A, B, C に分配する方法の個数です。
 この解答のように, A, B, C に先に最低限のボールを与えておき, 追加分のボールの個数を数える方法を「先入れ方式」といいます。
 
(2) A, B, C に少なくとも 1 個のボールを与えるので, (1) と同じように「A, B, C に先に 1 個与えて追加分を数える」としてもうまくいきません。具体的には,
 ・最初に A, B, C にボールを分配する方法は \(10\cdot 9\cdot 8=720\) (通り)
 ・次に残り 7 個のボールを 3 人に分配する方法は \(3^{7}\) (通り)
したがって,
   \(720\cdot 3^{7}\) (通り)
とするのは誤りです。これが誤りであることは次のようにも説明できます,
 例えば 10 個のボールを
  ①, ②, ③, ④, ⑤, ⑥, ⑦. ⑧, ⑨, ⑩
とします。
(例 1) 最初に A, B, C に順に ①, ②, ③ を与えます。
  A (①   ), B (②   ), C (③   )
次に, 残りボールをすべて A に与えると次のようになります。
  A (①, ④, ⑤, ⑥, ⑦, ⑧, ⑨, ⑩), B (②   ), C (③   )
(例 2) 最初に A, B, C に順に ④, ②, ③ を与えます。
  A (④   ), B (②   ), C (③   )
次に, 残りボールをすべて A に与えると次のようになります。
  A (④, ①, ⑤, ⑥, ⑦, ⑧, ⑨, ⑩), B (②   ), C (③   )
先ほどの \(720\cdot 3^{7}\) (通り) は (例 1) と (例 2) を区別して数えた結果ですが, 実際には (例 1) と (例 2) は同じ分け方になります。したがって, この場合は「先入れ方式」は通用しません。
 

分けるものを区別する場合は「先入れ方式」を用いてはならない


長くなったので (2) の解答は明日の記事で扱うことにします。

Nov.28
2015
高校数学の似て非なる問題に対し深い意識を持とう (3) - 問題提起編 –

今回はグループ分けの問題です。次の 2 つの問題を比較しながら考えてみてください。

【問題 1 】
(1) 区別のない 15 個のボールを 3 人 A, B, C に分配する。ただし, A には少なくとも 1 個, B には少なくとも 2 個, C には少なくとも 3 個のボールを分配するものとする。ボールの分配の方法は何通りあるか。

(2) 10 個のボールに 1 から 10 までの番号が振られている(すなわち, ボールは区別する)。この 10 個のボールを 3 人 A, B, C に分配するとき分配の方法は何通りあるか。ただし, どの人も少なくとも一つはボールをもらうものとする。

Nov.27
2015
高校数学の似て非なる問題に対し深い意識を持とう (2) - 解答編 –

2 次方程式の判別式に関する問題です。判別式を利用して, 2 次方程式が実数解をもつかどうかを判別できるのは, 係数がすべて実数の場合です。問題 1 は係数がすべて実数ですが, 問題 2 には係数が虚数のものがありますから, 判別式を利用して方程式が実数解をもつかどうかの条件は得られません。問題 2 は答が \(k\leqq 3\) とならないように注意してください。

【問題 1 】
 与えられた 2 次方程式の判別式を \(D\) とおくと, 実数解をもつ条件は,
  \(\displaystyle\frac{D}{4}=(2a+1)^{2}-a^{2}\geqq 0\)
   \((3a+1)(a+1)\geqq 0\)
   \(a\leqq -1\) または \(a\geqq -\displaystyle\frac{1}{3}\)

である。
【問題 2 】
 与えられた 2 次方程式は,
  \((x^{2}-4x+k)+(-2x+4)i=0\)
ここで, \(x\) と \(k\) は実数なので,
  \(\left\{ \begin{array}{l} x^{2}-4x+k=0\\
-2x+4=0\\
\end{array}\right.\)

となり, これを解いて, \(x=2\), \(k=4\) を得る。
 よって,
  \(k=4\)

Nov.26
2015
高校数学の似て非なる問題に対し深い意識を持とう (2) - 問題提起編 –

今回は, 方程式に関してです。次の問題を解いてみてください。
【問題 1 】
 2 次方程式
   \(x^{2}-(4a+2)x+a^{2}=0\)
が実数解をもつような実数 \(a\) の条件を求めよ。
【問題 2 】
 \(k\) を実数とする。このとき, 2 次方程式
    \(x^{2}-2(2+i)x+k+4i=0\)
が実数解をもつような \(k\) の条件を求めよ。ただし,\(i\) は虚数単位である。

Nov.25
2015
高校数学の似て非なる問題に対し深い意識を持とう (1)  – 解決編 –

どちらの問題も \(p\sin x+q\cos x\) 型の式ですが、問題1の方は、\(p\), \(q\) に相当する値が定数であるのに対し、問題 2 は \(x\) の入った式になっています。
したがって、問題1の場合は、三角関数だけからなる式なので、このような場合は三角関数の諸公式(加法定理・2倍角の公式・半角の公式など) が活かせないかをまず考えてみるとよいでしょう。これに対し、問題2の方は多項式と三角関数が組み合わさった式になっているので、このような場合は三角関数の公式を使ってもうまくいかないことが多く微分を使うことになります。
問題1のような「三角関数だけ」からなる式の場合も微分を使うこともありますが、その前に三角関数の公式だけで解決できないかを考えることを勧めます。

念のため解答は次のようになります。
【問題1】
\(f(x)\) を三角関数の合成を行なって、
\(f(x)=\sqrt{a^{2}+(4-a^{2})}\sin (x+\alpha)\)
      \(=2\sin (x+\alpha )\)

と変形します。ただし、\(\alpha\) は \(\cos\alpha =\displaystyle\frac{a}{2}\), \(\sin \alpha =\displaystyle\frac{\sqrt{4-a^{2}}}{2}\) を満たす実数とします。\(x\) の取りうる範囲は, \(0\leqq x\leqq 2\pi\) ですから \(\sin (x+\alpha )=1\) となることができて、このとき \(f(x)\) は最大値 2 をとります。

【問題2】
\(f'(x)=\sin x+x\cos x-\sin x=x\cos x\) ですから, \(f(x)\) の増減は次のようになります。

\(x\) 0 \(\cdots\) \(\frac{\pi}{2}\) \(\cdots\) \(\frac{3}{2}\pi\) \(\cdots\) \(2\pi \)
\(f'(x)\) + 0 0 +
\(f(x)\)  1 \(\nearrow\) \(\searrow\) \(\nearrow\)  1

したがって, 最大値は \(x=\displaystyle\frac{\pi}{2}\) のときにとる \(\displaystyle\frac{\pi}{2}\) です。