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第9回高大接続システム改革会議概要

2015年12月22日に第9回高大接続システム改革会議が文部科学省3階講堂で行われた。

今回の議題は「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についてである。
新たに導入される予定の記述式の問題について、具体的なイメージが示された。

問題イメージは、以下の文部科学省のサイトで公表されている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/12/22/1365554_06_1.pdf

なお、この数学の問題に関するコメントは別の記事で触れることとする。

従来のセンター試験が多肢選択式であったのに対し、新テストでは記述式を重視して取り入れ、思考力・表現力・判断力を評価しようというものである。
ただし、問題の質を改善することで、選択式の問題でも思考力などをはかることができるので、選択式の問題も併用する。

現時点での対象科目は国語と数学であり、英語については外部の試験を活用する。
記述は最大でも300字程度までとする。
記述問題は採点が大変であるため、別日程で行うことも検討されている。

問題例として、国語3題、数学1題が示された。
これはあくまで作問のあり方を示したイメージであり、難易度などを考慮したものではないとのことである。
特に、数学の問題に関しては、難易度も高く、厳密には数学Iの範囲を超えた部分もあるとのことであった。

国語では「国語総合」が題材となっている。
例1は、警視庁の事故統計資料を示し、その変化の原因などを議論する文章の空欄を40字や100字で記述する問題である。
例2は、小説家と作曲家に関する文章を読んだうえで、その共通点について【状況】と【問題】の組み合わせを選び【解決法】を30字から50字で記述するという問題である。これは連動型複数選択式に記述を加えたもので、組み合わせによって複数の解答が考えられる正解が1つではない問題となっている。
例3は、公立図書館に関する新聞記事を読んだうえで、今後の公立図書館の在るべき姿についての自分の考えを300字以内で記述する問題である。
その際に、自由な記述ではなく、段落の構成や、本文の引用などの条件があり、この条件を満たすように記述をしなければならない。

数学では「数学I」が題材となっている。
スーパームーンや校庭に描かれた形を写し取る方法について、三角比を用いて導いた関係式や理由を記述するという問題であった。

記述式を導入することによって、作問の幅が広がり、これまで有限個の解答から選び出していたものを自ら書き出すことによって新たな力をはかることができるというメリットがあるものの、実現可能性という側面から解答の形式に条件をつけたりしてコストとのバランスをとった結果が今回の問題案である。
公立図書館やスーパームーンなど、身近な事柄を題材にすることによって、日常において様々な体験をしていることが活かされるような効果を期待しているようだ。

さらなる論理性や主体性など、このテストではかれない能力は、自由記述や調査書などを用いた各大学による個別選抜に委ねられることとなる。

さらに、実施の具体的な方法や時期、採点基準や評価のばらつきへの対策、結果の示し方など、次々に質問が投げかけられたが、次回以降の議題であるとして明確な回答は避けられた。
今回議論するテスト問題の内容とこれらの課題とは密接に関わっているのであるが、議題を分けて議論することとなり、各委員も意見を言いづらい状況となった。
そのため、予定の時間より早めの14:45頃に終了となった。

This entry was posted on 木曜日, 12月 24th, 2015 at 10:45 PM and is filed under お知らせ, 教育, 数学. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

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