数学教育研究所 清史弘 公式サイト Fumihiro Sei Official Web Site
Mar.23
2019
数学の学習の仕方(概論編)

数学の学習において重要なことはいくつもありますが, 学習初期においては次の 3 つの自覚が大切です。今回は, この 3 つについて概要を説明します。どれも「あたりまえ」と思われがちなのですがタイトルに続く例を一度よく読んでみてください。

  1.  わからなくなったらわかるところまで戻ることができること
    数学の学習のすべてとまでは言いませんが, 数学の学習でわからない話が出てきたときは, それが出てきた経路をたどり元に戻ろうとする「姿勢」が大切です。なお, 実際に元に戻って示せたかどうかは大切ですがその次のことです。
     例えば, 三角関数の 2 倍角の公式 $$\sin 2\theta =2\sin \theta\cos\theta$$ $$\cos 2\theta =\cos^{2}\theta -\sin^{2}\theta$$ を忘れたとします。この 2 倍角の公式を丸暗記するかどうかがここでの論点ではありません。この 2 倍角の公式がすぐに出てこないときに, それよりも基本である「三角関数の加法定理」に戻ってそこから 2 倍角の公式を導き出そうとしようとするかどうかが大切です。
     この他にも, 三角関数の和積公式なども忘れたときに, これが導き出された経緯を考えて遡ろうとする姿勢が大切なのです。

  2.  初めて見るものについては, その定義に厳格に従うこと
     「これどうなのだろう?」と思ったときに定義に戻り, その定義に厳格に従い判断することが大切です。それは, 各自の感覚で判断することの反対のことです。特に, 「見たことがない」「聞いたことがない」「やったことがない」ということを理由に判断することは数学的には全くの無意味です。
     では, 一つの例を挙げましょう。 整数 \(a\) が整数 \(b\) の約数であることの定義は,

      「\(ax=b\) を満たす整数 \(x\) が存在すること」

    です。例えば, 整数 3 がなぜ整数 6 の約数であるかというと, \(3x=6\) を満たす整数 \(x\) (実際に \(x=2\) ) が存在するからです。
     さて, それでは「0 の約数」は何なのでしょうか。そのような場合でも独自な判断をするのではなく, 「定義」通りに考えます。定義に従うと,

      「\(ax=0\) を満たす整数 \(x\) が存在するような \(a\) のこと」

    です。しかし, この場合, 方程式 \(ax=0\) は \(x=0\) がつねに満たします。つまり, \(a\) がどのような整数であっても \(ax=0\) を満たす整数 \(x\) は存在するのです。したがって, 0 の約数はすべての整数ということになります。
     次に「互いに素」について考えてみましょう。整数 \(a\) と整数 \(b\) が互いに素であるとは, 「\(a\) と \(b\) の最大公約数が 1 であること」です。もちろんこれと同値な条件を定義にすることもあります。例えば 6 と 35 は互いに素です。では, 「0 と互いに素になる整数 \(x\)」は何でしょうか? これも定義に戻って考えればよいのです。

     ・ 0 の約数はすべての整数である
     ・ したがって, 「0 と \(a\) の最大公約数が 1 」となる \(a\) は \(a\) の約数が 1 だけである

    となりますから, \(a=\pm 1\) が 0 と 1 が互いに素になる整数です。

  3.  言葉を正確にとらえる
     これも当然のことに聞こえますが, 実際はそうならないときが多くあります。例えば,

      「無理数と無理数の和は無理数になるとは『限らない』」

    という表現ですが, これが

      「無理数と無理数の和は無理数『ではない』」

    に変えられて理解されてしまうことも多々あります。
     2 つの無理数 \(\sqrt{2}\), \(\sqrt{3}\) を加えると \(\sqrt{2}+\sqrt{3}\) ですが, これは無理数です。しかし, \((1+\sqrt{2})+(1-\sqrt{2})=2\) のように 2 つの無理数 \(1+\sqrt{2}\), \(1-\sqrt{2}\) を加えたものは無理数ではありません。したがって, 「無理数に無理数を加えた場合, 結果は無理数になることもあるが, それだけではなく有理数になるケースもある」という主張なので『限らない』という表現になっていますが, これを『ではない』にすると意味が変わってきます。

Mar.21
2019
プラスエリートに関する質問について

 2019年3月21日現在で、駿台文庫の「プラスエリートI・A」と「プラスエリートII・B」が刊行され、「プラスエリートIII」も4月中(遅くて5月)には発売される予定です。

 さて、これまで「プラスエリート」シリーズを使っていただいた方の中には、少なからず質問・疑問をもつ方もいらっしゃるようです。中には、多くの人にその疑問点を共有した方がよいものもあります。
 そこで、今後、何らかの形でそれに答えるようなしくみを考えていきたいと思います。実施は早くても4月以降になります。
プラスエリートシリーズを引き続きよろしくお願いします。

Mar.15
2019
投稿に関するお願い

日頃、多くの方がこのサイトを訪れていただきありがとうございます。このサイトの記事には投稿機能がありますが、この投稿内容については次のようなルールを敷いております。このルールから大きく逸脱した場合は承認されないことがあります。

・なるべく記事と関係のある内容でお願いします。
 厳格に判断しているわけではありません。記事には関係ないが、当社あるいは代表に対する質問、意見等であればかまいません。当社とは全く関係のない塾・予備校・人物に対する話題は対応できかねます。

・他の個人、組織を特定できる内容で他を攻撃する内容、乱暴な言葉遣いを含むものは承認されません。

近年、SNS等で姿の見えない立場(ペンネーム等を含む)から、特定の個人に対して攻撃的な行動を起こし、弱い立場の人たちを傷つけるということが社会問題化しています。中には、誤った情報に基づいて攻撃的であったり、浅い理解のもとで攻撃的であるものもあります。

当社としては、このような件については厳しい姿勢で臨みます。
皆様のご理解をお願いします。

Dec.08
2018
受験生への挑戦状 2

受験生のために, 基本的しかしピリッと辛みのある問題の続きです。「受験生への挑戦状 1」と同様に, 以下の問題を解いて, 解答ファイルを開いてみてください。ファイルが開ければすべて正解ということになります。
なお, 以下の問題で「すべて求めよ」「すべて選べ」とあっても必ずしも複数該当するものがあるとは限りません。また, 複数答が存在する場合は, 選択肢の番号の小さい順に答えるものとします。
難易度は標準レベルです。IV. のみ数学 III の範囲になります。
問題

  1. 次の定積分の値を求めてください。      $$\int_{1}^{5}\sqrt{(x+2)^{2}-12(x-1)}\,dx$$
    答は一桁の整数になります。
  2. 3 個のサイコロを同時に投げます。このとき, 3 個のサイコロの目の積が 15 の倍数になる確率を \(\frac{A}{B}\) と表すとき, \(A\) と \(B\) の値はいくつになるでしょうか。ただし, \(\frac{A}{B}\) は既約分数で, \(A\), \(B\) は正の整数とします。また, どのサイコロも 1 から 6 までの目が出る確率は等しく, 3 個のサイコロの目は独立に出るものとします。
  3. \(xy\) 平面上の円 \(x^{2}+y^{2}=1\) と放物線 \(y=\left( 1-\frac{\sqrt{3}}{2}\right)x^{2}+k\) が接するような実数 \(k\) の値を次の解答群からすべて選んでください。
    ① \(-3\)   ② \(-2\)   ③ \(-1\)   ④ 0   ⑤ 1   ⑥ 2   ⑦ 3
  4. 次の式を満たす連続関数 \(f(x)\) は以下の解答群のうちどれでしょうか。すべて選んでください。
    $$\int_{0}^{x}e^{x-t}f(t)\,dt=e^{x}\cos x$$
    ① \(f(x)=\cos x\)  ② \(f(x)=\sin x\)  ③ \(f(x)=e^{x}\cos x\)
    ④ \(f(x)=e^{x}\sin x\) ⑤ \(f(x)=e^{x}(\sin x+\cos x)\)  ⑥ \(f(x)=e^{x}(\sin x-\cos x)\)
    ⑦ 存在しない ⑧ 任意の連続関数

● 正解がわかったら, ここをクリックしてください。pdf ファイルが開きますが, パスワードを要求されます。パスワードは I. ~ IV. の答です。入力の方法は下の例を参考にしてください。すべて正解の場合のみ pdf ファイルが開きます。
(入力例 1 )
I. 1 II. A 2, B 3 III. ③ IV. ④, ⑤
の場合は, パスワードに「123345」を入れます。
(入力例 2 )
I. 3 II. A 45, B 679 III. ①, ② IV. ③, ④, ⑤
の場合は, パスワードに「34567912345」を入れます。

Dec.07
2018
受験生への挑戦状 1


 受験生のために, 基本的しかしピリッと辛みのある問題を用意しました。まずは, 以下の問題を解いて, 解答ファイルを開いてみてください。ファイルが開ければすべて正解ということになります。
 難易度は標準レベルです。IV. のみ数学 III の範囲になります。

問題

  1. \(k\) を実数とする。 \(x\) の 2 次方程式
    $$x^{2}-2(1+2i)x+k+4i=0$$
    が実数解をもつような \(k\) の条件を
    $$k\, \fbox{A}\, \fbox{ア} $$
    と表すとき, \(\fbox{A}\), \(\fbox{ア}\) に入るものを次から選べ。
    \(\fbox{A}\) の解答群
      ① \(=\)   ② \(>\)   ③ \(\geqq\)   ④ \(<\)   ⑤ \(\leqq\)
    \(\fbox{ア}\) の解答群
      ① \(-4\)   ② \(-3\)   ③ \(-2\)   ④ \(-1\)   ⑤ \(0\)   ⑥ \(1\)   ⑦ \(2\)   ⑧ \(3\)
    (例) 例えば, \(k=0\) が答の場合は \(\fbox{A}\) は ①, \(\fbox{ア}\) は ⑤ です。また, \(k\geqq -1\) が答の場合は, \(\fbox{A}\) は ③, \(\fbox{ア}\) は ④ です。
  2. 次の和を求めよ。
    $$\sum_{k=1}^{5}\{k! -(k-1)!\}$$
  3. \(xy\) 平面上の 2 つの円

        \(C_{1}:x^{2}+y^{2}=1\)
        \(C_{2}:x^{2}+y^{2}-4x+2ay+a^{2}=0\)

    が 2 点で交わり, その交点を通る直線は点 \((-1,-3)\) を通るという。このとき, 実数 \(a\) の値あるいは \(a\) が満たす条件は次のどれになるかを答えよ。
    (解答群)
      ① \(a=1\)   ② \(a=5\)   ③ \(a=1\), \(5\)   ④ \(1\leqq a\leqq 5\)   ⑤\(1< a < 5\)

  4. \(0\leqq x\leqq \pi\) で定義された関数 \(f(x)=\frac{1}{2}\sin 2x- 3\sin x-x+1\) の最大値を与える \(x\) の値は次のどれか。
    (解答群)
      ① \(0\)   ② \(\frac{\pi}{6}\)   ③ \(\frac{\pi}{3}\)   ④ \(\frac{\pi}{2}\)   ⑤ \(\frac{2}{3}\pi\)   ⑥ \(\frac{5}{6}\pi\)   ⑦ \(\pi\)

● 正解がわかったら, ここをクリックしてください。pdf ファイルが開きますが, パスワードを要求されます。パスワードは I. ~ IV. の答です。入力の方法は下の例を参考にしてください。すべて正解の場合のみ pdf ファイルが開きます。
 (入力例)
    I. A: ①, ア: ②   II. 123   III. ③   IV. ④
の場合は, パスワードに「1212334」を入れます。

Nov.07
2018
ページ更新のお知らせ

 高校数学を考える(受験生向け)のページにある「似て非なる問題に対し深い意識を持とう」のコーナーに、問題一覧のページを作成いたしました。これまでの問題を同時に見ることができます。
 

Nov.03
2018
高校数学解説講座 1


1. コーシー・シュワルツの不等式について

 高校数学で学習する絶対不等式の一つにコーシー・シュワルツの不等式というものがあります。これは,
(1) \((ax+by)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2})(x^{2}+y^{2})\)
(2) \((ax+by+cz)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})\)
(3) \((ax+by+cz+dw)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2}+c^{2}+d^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2}+w^{2})\)
$$\vdots$$
のような不等式で, 一般には, \(\sum\) 記号を用いて,
$$\left(\sum_{k=1}^{n}a_{k}b_{k}\right)^{2}\leqq \left( \sum_{k=1}^{n}a_{k}^{\,2}\right)\left( \sum_{k=1}^{n}b_{k}^{\,2}\right)  \cdots\cdots\,(★)$$
と表すことができます。ただし, 文字はすべて実数とします。
 ところで, 不等式 (★) の \(n=3\) の場合は,
$$(a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+a_{3}b_{3})^{2}\leqq (a_{1}^{\,2}+a_{2}^{\,2}+a_{3}^{\,2})(b_{1}^{\,2}+b_{2}^{\,2}+b_{3}^{\,2})$$
ですが, これは,
$$\vec{a}=\left( \begin{array}{c} a_{1} \\ a_{2} \\ a_{3} \\ \end{array}\right), \vec{b}=\left( \begin{array}{c} b_{1} \\ b_{2} \\ b_{3} \\ \end{array}\right)$$
とおくと,
  \(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) の内積は, 
$$\vec{a}\cdot \vec{b}=a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+a_{3}b_{3}$$
  \(\vec{a}\) と \(\vec{b}\) の大きさは, それぞれ,
$$|\vec{a}|^{2}=a_{1}^{\,2}+a_{2}^{\,2}+a_{3}^{\,2}, |\vec{b}|^{2}=b_{1}^{\,2}+b_{2}^{\,2}+b_{3}^{\,2}$$
ですから,
$$(\vec{a}\cdot \vec{b})^{2}\leqq |\vec{a}|^{2}|\vec{b}|^{2}$$
と表せます。この不等式は高校数学での内積の定義を考えれば成り立つことは明らかです。なぜなら,
$$\vec{a}\cdot \vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos \theta (\theta は \vec{a} と \vec{b} のなす角)$$
が内積の定義ですから,
$$(\vec{a}\cdot \vec{b})^{2}=|\vec{a}|^{2}|\vec{b}|^{2}\cos^{2}\theta$$
となり, \(\cos^{2}\theta \leqq 1\) ですから, 右辺は,
$$|\vec{a}|^{2}|\vec{b}|^{2}\cos^{2}\theta\leqq |\vec{a}|^{2}|\vec{b}|^{2}$$
となるので,
$$(\vec{a}\cdot \vec{b})^{2}\leqq |\vec{a}|^{2}|\vec{b}|^{2}$$
となるからです。
 さて, \(n=3\) の場合は以上のように考えて説明することも可能ですが, 一般の 2 以上の自然数 \(n\) については, ベクトルの大きさと内積の関係を理由にすることはできません。 4 次元以上のベクトルの大きさと内積が定義されていないからです。
(注)
もちろん, 高校数学を超えれば, ベクトルの大きさと内積を定義することはできます。

 さて, それでは, 一般の場合について証明してみましょう。

証明
 コーシー・シュワルツの不等式
$$\left( \sum_{k=1}^{n}a_{k}b_{k}\right)^{2}\leqq \left( \sum_{k=1}^{n}a_{k}^{\,2}\right)\left( \sum_{k=1}^{n}b_{k}^{\,2}\right)$$
を示すために, 次のような関数を用意します。
$$f(t)=\sum_{k=1}^{n}(a_{k}t-b_{k})^{2}$$
少しわかりにくいかもしれませんが, 例えば \(n=3\) の場合である
$$(a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+a_{3}b_{3})^{2}\leqq (a_{1}^{\,2}+a_{2}^{\,2}+a_{3}^{\,2})(b_{1}^{\,2}+b_{2}^{\,2}+b_{3}^{\,2})$$
を示す場合であれば,
$$f(t)=(a_{1}t-b_{1})^{2}+(a_{2}t-b_{2})^{2}+ (a_{3}t-b_{3})^{2}$$
とおくことになります。
 さて, 話を一般の場合の \(n\) の場合に戻しましょう。このとき \(f(t)\) は次のように変形できます。
$$\begin{eqnarray}
f(t)&=&\sum_{k=1}^{n}(a_{k}t-b_{k})^{2}\\
&=&\sum_{k=1}^{n}(a_{k}^{\,2}t^{2}-2a_{k}b_{k}t+b_{k}^{\,2})
\end{eqnarray}$$
これを \(\sum\) 記号を用いずに書くと,
$$f(t)=(a_{1}^{\,2}t^{2}-2a_{1}b_{1}t+b_{1}^{\,2})+(a_{2}^{\,2}t^{2}-2a_{2}b_{2}t+b_{2})+\cdots +(a_{n}^{\,2}t^{2}-2a_{n}b_{n}t+b_{n}^{\,2})$$
のようになり, これを \(t\) で整理すると,
$$f(t)=(a_{1}^{\,2}+a_{2}^{\,2}+\cdots +a_{n}^{\,2})t^{2}-2(a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+\cdots +a_{n}b_{n})t +(b_{1}^{\,2}+b_{2}^{\,2}+\cdots +b_{n}^{\,2})$$
となるので, 結局 \(\sum\) 記号を用いれば,
$$f(t)=\left( \sum_{k=1}^{n}a_{k}^{\,2}\right)\, t^{2} -2\left( \sum_{k=1}^{n}a_{k}b_{k}\right)\,t+\sum_{k=1}^{n}b_{k}^{\,2}$$
と表せます。ここで,
$$\begin{eqnarray}
A&=&a_{1}^{\,2}+a_{2}^{\,2}+\cdots +a_{n}^{\,2}\\
B&=&b_{1}^{\,2}+b_{2}^{\,2}+\cdots +b_{n}^{\,2}\\
C&=&a_{1}b_{1}+a_{2}b_{2}+\cdots +a_{n}b_{n}\\
\end{eqnarray}$$
とおくと, \(f(t)\) は,
$$f(t)=At^{2}-2Ct+B$$
と表せます。なお, 今, 示したい式を \(A\), \(B\), \(C\) を用いて表すと, \(C^{2}\leqq AB\) となります。
 さて, 一般の \(C^{2}\leqq AB\) の説明を始める前に, 例外的な場合である \(A=0\) の場合, すなわち, \(a_{1}=a_{2}=\cdots =a_{n}=0\) の場合に触れておきましょう。この場合は, \(C=0\) でもあるので, \(C^{2}\leqq AB\) は等号で成立します。\(A=0\) の場合は, これで示されたので以下は \(A\neq 0\) の場合を考えることにします。
 再び \(f(t)\) についてですがこれは,
$$f(t)=(a_{1}t-b_{1})^{2}+(a_{2}t-b_{2})^{2}+\cdots +(a_{n}t-b_{n})^{2}$$
のように「2 乗の和」の形で表される式でしたから \(t\) にどのような実数を代入しても \(f(t)<0\) となることはありません。したがって, すべての実数 \(t\) に対して \(f(t)\geqq 0\) であるので, \(f(t)\) を今一度 \(f(t)=At^{2}-2Ct+B\) と見ると, 2 次方程式 \(At^{2}-2Ct+B=0\) の判別式 \(D\) は \(D\leqq 0\) となります。ここで, $$\frac{D}{4}=C^{2}-AB$$ ですから, \(D\leqq 0\) は, $$C^{2}-AB\leqq 0$$ すなわち, $$C^{2}\leqq AB$$ が成立します。これで, コーシー・シュワルツの不等式は示されました。

 ところで, この不等式の等号が成立する場合ですが, これは \(C^{2}=AB\) となる場合, すなわち, 判別式 \(D\) が \(D=0\) となる場合です。元々, \(f(t)\) は,
$$f(t)=\sum^{n}_{k=1} (a_{k}t-b_{k})^{2}$$
と表され, 決して負になることのない 2 次式でしたので, \(D=0\) であることは, ここでは, 「ある \(t\) に対し \(f(t)=0\) となる」ことです。これは, すべての \(k=1,2,3,\cdots ,n\) に対して \(a_{k}t-b_{k}=0\) となる \(t\) の存在すること, つまり,
$$a_{1}t-b_{1}=0, a_{2}t-b_{2}=0,\cdots ,a_{n}t-b_{n}=0$$
がすべて同じ解になることです。これは,
$$\frac{b_{1}}{a_{1}}=\frac{b_{2}}{a_{2}}=\cdots =\frac{b_{n}}{a_{n}}$$
となることです。ただし, 分母が 0 のときは, 分子も 0 とします。

補足
 ここでは, 一般の \(n\) の場合について証明をしましたが, \(n=2,3\) などの場合には次のような証明も可能です。

  • \((ax+by)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2})(x^{2}+y^{2})\) について
      \((a^{2}+b^{2})(x^{2}+y^{2})-(ax+by)^{2}\)
       \(=(a^{2}x^{2}+a^{2}y^{2}+b^{2}x^{2}+b^{2}y^{2})-(a^{2}x^{2}+2abxy+b^{2}y^{2})\)
       \(=(ay)^{2}+(bx)^{2}-2ay\cdot bx\)
       \(=(ay-bx)^{2}\)
       \(\geqq 0\)
    したがって
      \((ax+by)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2})(x^{2}+y^{2})\)
  • \((ax+by+cz)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})\) について
    同様に次のように変形します。
      \((a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})-(ax+by+cz)^{2}\)
       \(=(ay-bx)^{2}+(bz-cy)^{2}+(cx-az)^{2}\)
       \(\geqq 0\)
    したがって
      \((ax+by+cz)^{2}\leqq (a^{2}+b^{2}+c^{2})(x^{2}+y^{2}+z^{2})\)
Oct.15
2018
「ピアノ連弾組曲 夜の詩」特別割引のお知らせ

現在、Amazon にて販売中の楽譜「ピアノ連弾組曲 夜の詩」を特別価格にてご提供いたします。
定価1296円(税込)のところ、600円(税込)で販売しております。
是非、この機会にご利用ください。

Jul.03
2018
2018年出題分野表

いくつかの大学について入試の出題分野をまとめた資料の2018年版を掲載いたしました。

資料としてお使いください。

http://math.co.jp/pc/w_student.php

Apr.25
2018
電子書籍「数学の翼」第7号発売のお知らせ

本日、雑誌「数学の翼第7号」が電子書籍で発売されました。
この号の内容は以下の通りです。

  • みらい設計にお任せあれ 「第2話 神経衰弱が終わるまでの回数
  • 高校数学を学んでいる人のために 「視力検査」
  • Mathmusic 「黄金比」
  • 数学の幸せ物語 「第7話 教育者の条件(後編)
  • 数学教育の隠し味 「ちょっと気になる高校数学用語」

当初の発売予定日よりも大幅に遅れてしまいましたことを心よりお詫び申し上げます。

この雑誌に関する情報は「数学の翼」のページでも随時お知らせしております。
販売価格は360円(税込389円)で、Amazon Kindle のみ対応です。