数学の病気
よくある受験生の現象を記録していきたいと思う。
【記号負け】
非常に簡単なことを言っているにも関わらず、それを記号で表現するとわからなくなったり、記号を使うとわけのわからないことをする現象。
例えば、
1/a + 1/b = 1/(a+b) にならないことくらいは承知しているのに、
Σ_(k=1)^n 1/(k(k+1))=1/(1/3 n(n+1)(n+2))
としてしまう。
最近の例では、東工大の問題
「Σ_(n=0)^99 3^n の桁数を求めよ。」
に対して、
「Σ_(n=0)^99 (3^n の桁数)」
などというものがあった。
【記号神経症】
この記号は用いてよいのか、とか、使ってよいのかとかばかり気にして、本質的な答案を書けない状態でいる病気。
例えば、
「答案に『1次独立』という用語を用いてよいですか?」
のようなことばかりに悩んでいる状態。
【外積病】
授業中にベクトルの外積の話が出ると、「この先生すごい」と勘違いしたり、「自分は高度な内容に触れている」と勘違いし、興奮する病気。実際のところ、空間内の平行でない2つのベクトルに垂直なベクトルを出すだけに用いられるだけがほとんどなのに外積を深く学んだ気になる人も多い。
外積病にかかった受験生は興奮しながら次のような質問をしたくなる。「外積って試験で使っていいのですか?」 私の著書のベクトルにも書いておいたが、外積を表だって使わなければならない場面はほとんどない。陰でうまく使えばよいだけで。よってその質問はナンセンスである。
次は病気の先生についてです。
【巻き添え講師】
教育者が受験指導するときに必要な注意事項を受験生にも強要する教員・講師。例えば「垂線の足」と言う用語は教科書にはないため、教育者が公式の文章を書くときや入試問題等を作成するときは使いにくい。(普通は垂線と平面の交点などの表現をとる) しかし、教員自体が使えないからといって受験生にも「教科書にはない用語だから使ってはダメ」と言って使用を禁止する。また、「一次独立」という用語は教科書では使われないので、教育者が一般の受験生に説明するオフィシャルな文章には使えない。しかし、自分達が使えないからと言って、高校生にはも「使ってはダメ」と禁止してしまう。高校生たちは、勘違いした教員の巻き添えをくらってしまう。このように、教員自身が注意しなければならないことと、高校生が注意しなければならないことの区別ができない教員のことを言う。普通は遅くても10年くらいでここから脱皮するが、歳をとるまで脱皮しなければ頑固さも加わってかなり手ごわい。試験の採点ではつまらないことにこだわって減点するようになる。生徒達は、本質ではないことに神経を使うことになるから当然学力は伸びない。
【チラ見せ講師】
(定義) 高校数学の授業で、大学教養程度の話をチラッとだけして説明しない。もちろん、大学教養レベルの数学の話に触れることが悪いわけではない。「チラ見せ講師」の場合は、自分が知っているということだけを言って、細かい説明は一切しない講師のことである。
例えば、
(例1)「これは外積を知っているとこんな簡単に解けるんだ」と解いて見せるものの、外積が何なのかを説明しない。
(例2) 「これは関数の合成積を知っていると結果がすぐに見えて、ほら、こんなに簡単だろ!」と言って合成積の説明をしない。
(例3) (数学IIIの部分積分の授業で) 「これはβ関数と言うんだよ。この結果から, この定積分の結果はこうなるんだ」と言って、β関数の説明はしない。 (生徒への被害) 難しいことに触れた気になる。ここまではよいが、「かっこいい」と思って、
この方法に固執する。結果、身にならずにまともな方法を習得できないで終わる。(他の先生への被害) チラ見せ講師の多くは「言ってはみたものの、実はその説明はできないかしたくない人」である。そのため、他の先生のところに生徒は質問しに行く。他の先生はチラ見せ講師の後始末をすることになる。つまり、無駄な時間を取られる。 (その他) チラ見せ講師は意外に人気があることもある。場合によっては勘違いした生徒に尊敬されることもある。生徒が何か特別高級ないいことを知っているつもりになる。しかしそれは、幸せな気分に浸っているにすぎない。他との関連を理解していない、独立な知識を得ただけであるから。例えば、ワシントンがアメリカの首都であることを知らずに、ワシントンという町の名前を覚えて満足しているのに似ている。
【酔っ払い講師】
生徒の仕上げる解答としては、到底必要のない部分までも書いて、「自分の解答は完璧だ」と自分に酔ってしまう講師。
解答はまちがっているわけではないが、当然解答用紙には収まらない。それでもそんなことはお構いなし。