- Jun.01
2010
- 軌跡の方程式?
4月の末に高校3年生がある問題集をもってきました。たぶん、かなり多くの受験生が使っている問題集です。この問題集が何なのかは twitter 上のDMでのみお知らせします。メールでは答えません。
まず、その生徒の質問の内容を説明しましょう。話を簡単にするために問題を簡単にしてあります。
軌跡が y=x (0≦x≦1) で表される図形になる問題がありました。(実際は放物線の一部でした)
この問題集は実際の入試問題が「軌跡を求めよ」であったのに対し、わざわざ
「軌跡の方程式を求めよ」
と変更し出題しました。そこで、その解答には
y=x
とあったのです。生徒は、範囲は書かなくてよいのかと質問したので、私はそのときは「範囲も書いておいた方がよい」と答えました。
すると生徒は「ということは、この問題集の解答はまちがっているということですね」と言うので「そうだ」と答えました。
このことを数日前に twitter 上で書いていたら、それを聞いてこの問題集の解答が心配になった受験生が何人かいて、私のところに問い合わせをしてきました。私は同じ返事をすると、その うちの1人はその問題集を出している出版社に問い合わせをしたようです。すると、出版社からの返事は
「軌跡を求めよではなく、軌跡の『方程式』を求めよであるから、範囲まで答える必要はなく、軌跡を含んである方程式を答えればよい」
というものでした。だから、間違っていない、これでいいんだというものでした。(以下、この受験生の話を信じた場合という仮定がつきます。)
私は、「軌跡の方程式」のこのような定義を始めて聞きました。「軌跡の方程式」とは「軌跡を含む図形の方程式」ということだというのです。
妙な定義です。とても数学的な定義とは思えません。例えば、
- 例1
軌跡が y=x (0≦x≦1) の場合、軌跡の方程式を答えよとあれば、
(1) y=x (2) y^2=x^2 (3) (x-y)f(x,y)=0
はすべてよいのか。
- 例2
軌跡が半円 y=(1-x^2)^(1/2) の場合、軌跡の方程式を答えよとあれば、
x^2+y^2=1
でもよいのか。
- 例3
軌跡の方程式を求めよの問いに対し、0x=0 (平面全体になる) と書けばつねに○をもらえるのか。
ということになります。そもそも、このようなあいまいなものは数学の定義になるはずがありません。おそらく、その問題集独特の定義なのでしょう。
念のため、私はまわりの人に聞いてみました。一部、個性的な定義をする人もいましたが、大半は上の出版社の定義が理解できないというものでした。そして、そもそもそのような場合に「軌跡の方程式を求めよ」などと書かないというのです。
入試問題には、「軌跡はある円の一部であるが、その円の方程式を求めよ。」というものならあります。ですが、独自(?)に「軌跡の方程式を求めよ」とわざわざ問題文を代えるというのは、数学を知らない人のすることでしょう。
同じ予備校の先生がK塾のテキストも調べてくれましたが、K塾のテキストにも「軌跡の方程式」などという言葉はないようです。私は、受験業界の年配の人 にも多く尋ねてみました。すると、みなさんがそろって「明らかに出版社がおかしい」と言っており、とくにN岡氏は次のように返答されました。
(引用)
>お尋ねの件、(出版社名) の誤りは明らかでしょう。
>そもそも
>> 「軌跡の方程式を求めよ」
> ↑この出題が筋悪です。
>最初の発想が悪いので、後は何をやってもすべて無駄、と
>いうのが小生の立ち場です。
>
>f(x,y)=0 の形をした軌跡の必要条件の一つを求めよ、な
>ら、言い張るのも無理ではないと思いますが。
(引用終わり)
結局、単なる間違い、悪変更ではなく、「間違いを認めたくないという姿勢」と、「勝手に自分勝手な用語を定義してしまう横暴ぶり」が問題なのだと思っています。
ただ、この問題集はというよりは、この出版社は多くの受験生に支持されているようで、私、および私以外の多くの数学の教育者達がそれ以外にもこの問題集の よくない点を指摘しても受験生の多くは、「この出版社が間違うはずはない」と思ってしまうようで、いつも苦労しています。
以上の話は、夏の教員向けのセミナーでも話題にする予定です。
- Jun.01
2010
- ピアノ連弾組曲「コロポックル」(清史弘作曲) の演奏依頼
この組曲 (20 分弱) を演奏会の曲目で演奏していただければ演奏会の開催支援をいたします。必ず演奏会のプログラムを組む前にご相談ください。事後申請は不可です。
支援の目安
- 定員が70名以下の演奏会場の場合 (2 万円)
- 定員が 71 名以上150名以下の演奏会場の場合 (3万円)
- 定員が 151名以上 300 名以下の演奏会場の場合 (5万円)
- 定員が 301 名以上の演奏会場の場合 (10万円)
ピアノ連弾組曲「コロポックル」
第1曲 夜景
第2曲 セレナーデ
第3曲 コロポックル
- May.17
2010
- 私の目指したいもの
一時期、多くの人が持っていたポケベル(もしかして、今では死語?) も携帯電話の普及によって姿を消しました。カーナビもそのうちに姿を消すと思っています。なぜなら、携帯電話にはGPS機能がすでにあり、また、目的地ま での検索が今はでき、あとは渋滞情報が簡単に手に入れば(もしかしてもう手に入るのかな) わざわざ数万から数十万するものを車に取り付ける必要はないからです。
さて、話は変わります。私は、教育はそれぞれの人の居住地、経済力によらずだれもがある程度は平等に受けることができるべきと考えます。しかし、現状は 教育の格差は大きく、地方によっては、塾、予備校もなく、教科書程度の内容を繰り返すしかないところも多くあります。
教育の方法の一つである「授業」は、今、対面式(ライブ授業)とビデオ授業に別れます。「対面式」の方は相手のニーズにあわせて、同じことを教えるにし ても毎回異なる授業を展開し、学習者との信頼関係を築きながら行うものですから、まだしばらくは存続し、必要とされるとは思います。しかし、いわゆる「ビ デオ予備校」のようなものはそのうちになくなると予想しています。なぜなら、そのようなものは、誰かがネットで無料で閲覧できるようにしてしまえばよいの です。質の高いものが無料でネットで流れると、だれもお金を払ってまで「ビデオ予備校」に通って見ようとはしません。今、私は、これからそれを実践しよう と計画中です。
私は、一人の教育者として、教育の格差をなくすこと、誰でもある程度は質の高い教育を受けられることが、日本のためを考えても必要だと思いますので小さな力でありますが、努力していきたいと考えています。
教育者の方で賛同してくれる方、協力してくれる方がいるとうれしいです。
- May.16
2010
- 書籍 「数学の幸せ物語」(現代数学社)
高校数学の誤った理解、学習法、数学の面白い話題を集め、一つのストーリーにしました。お話だけでも面白いと思います。
リンクの貼ってあるものは一部を閲覧できます。
「数学の幸せ物語」(現代数学社)
(前編は2010年1月 25 日刊行、後編は2010年7月刊行予定)
キャスト一覧 (24.0KB)
前編
第1話 伝統 (18.1KB)
第2話 予想と解答 (6.13KB)
第3話 火星に生物がいる確率 (20.3KB)
第4話 同じ表現だから (21.9KB)
第5話 不等式が教えてくれたこと (9.49KB)
第6話 図の怖さを知れ
第7話 立場をかえてみてみると
第8話 教育者の条件 (18.3KB)
第9話 幸一君の夢
後編
第10話 これなら大丈夫 (2.21MB)
第11話 暗中模索
第12話 宝の持ち腐れ
第13話 証先生倒れる (21.5KB)
第14話 短期的学習と長期的学習
第15話 「知らないこと」と「わからないこと」
第16話 公式には覚え方がある (1.65MB)
第17話 伝わらない
第18話 競った仲間がいたから (392KB)
- Apr.27
2010
- 最近どうしているかというと・・・・
ついに、通常期に入り、大忙しの毎日を送っています。今年の予定は、授業だけでも
月曜 あざみ野 → 四谷(大学) → エミール
火曜 立川 (朝〜夜)
水曜 お茶の水 (朝・昼) → 市ヶ谷(夜)
木曜 横浜 (朝〜夜)
金曜 自由が丘 (夜)
土曜 お茶の水 (昼・夜)
となっています。
それで、最近は「春の大行事」になりつつある「旺文社の入試正解」の執筆もようやく終わりかけています。
この後は、問題集の残りの完成、問題集の続編、新書、指導書、理系への数学の原稿、7月に開かれるある催し物に使われる曲の作曲などが待っている状態です。
- Apr.15
2010
- 新年度を迎えて
予備校の授業は今日から新学期が始まります。あいかわらず忙しい日々が始まりますが、授業はもちろん、授業以外の活動も精力的に勧める予定です。
問題集のうちの一つは今月中にある程度の目処をたてるつもりです。
- Mar.26
2010
- 難しい決断
その昔、北海道日本ハムファイターズに新庄という選手がいました。華麗な守備で試合を盛り上げる一方で、フィールドの外でもちょっと変わった言動で注目 されることもありました。でも、あの言動って現役のプロ野球選手が言うからスポーツ新聞ネタにもなるのですね。現に彼が引退し「普通の人」になってからで は、ちょっと変わったことを言っていても誰も見向きもしない。
同じことが自分にも当てはまるのかなと思えてきました。「大手」の予備校の先生であるから、問題集を書いたり、講演をしても聞いてもらえるのかなと。ま た、「お友達になりましょう」メールが届いたりと。ちなみ、私宛に昨年の場合150件くらい初めての人からメールが来ます。70名くらいが読者から、40 名くらいが高校の先生から、昔の友達から 10 名くらい、ちょっと言えない先生と呼ばれる人達から 3 名、あとは分類がよくわからない人達という感じで。
また、先日の明治大学の講演会でも、私に会いたがっているという先生達が何人もいてくださり嬉しい限りです。それもこれも所属があるからなのかもしれません。
この時期に異なる業種からの妙なお誘いを受けてしまいました。今までを精算するのもなあと。
話が進み、確定すれば言うかもしれません。しばらくはこれで悩みそう。
- Mar.24
2010
- 今年の幸せ物語
今年度も「幸せ物語」を作り続けます。今年度は「幸せ物語10」です。ただ、今年度からは大学以外の授業では配布せず、web 上で1, 2週間に一度のペースで発表します。
昨日、今年合格した高校生と話をしましたが、「幸せ物語09」は普段の学習で得られない貴重な数学の情報を得られたとすこぶる評判はよかったです。
今年はこれまでの年よりも、数学が苦手な生徒を教えることになりましたので、また違った話ができることと思います。
- Mar.23
2010
- 上手な嘘と下手な嘘
例えば、みなさんが自分では面白いと思っている小説が書けたとしましょう。ここで、あなたは世間ではちょっとだけ名の知れた人、少しだけ尊敬される人とします。例えば、○○高校の先生だとか、小さな会社の社長さんとか。
その小説に自信をもって、それをある出版社にもって行ったとします。(実は出来は相当悪いかもしれません)
さて、出版社の担当者に見せたところ、その担当者は「成り上がり者の小説なんて出版したくない。でも本当のことを言うと失礼になる」と判断し、最初から出版する気は全くないとします。しかし、失礼に断りたくはないとも思っていたとします。
そのときの状況にもよりますが、気の弱い担当者、あるいは無責任な担当者は
出版できない理由A: 書いた人間が成り上がりものだから
を言わないで、
出版できない理由B: 小説にしては登場人物が少なすぎる。
出版できない理由C: 今は、当社は出版予定作品を多く抱えていて、遅くなってしまう。
出版ではない理由D: 持ち込みの場合は会議での承認に時間がかかる。
などなど、本意ではない理由を多くあげたりします。B, C, D があるから諦めてくれというわけです。しかし、「それならば、B, C, D をクリアーすれば大丈夫なのか」と思う人もいるはずです。そこで、数ヶ月後にみなさんは努力の結果、 B をクリアーし、 C, D を覚悟して出版社にもっていったときに、本当の理由が A であることを別の担当者に聞かされたとします。そのとき、みなさんはどう思いますか。
このようなことが最近、自分自身にも他の人にもよく見受けられるので少し書いてみました。下手な嘘はときに人を大きく傷つけると。自分自身も人を傷つけないために。
ちなみに、出版社を例に出しましたが、私と関わりのある出版社との関係はどこも良好です。真近の例を出すと最近は必要以上に過激に反応する人達もいるのでかなりぼかしました。
今日届いた封筒を見ての感想です。
- Mar.18
2010
- twitter を勧められて
あるジャーナリストの方に会って、最近の話を話していたら、そのような話はtwitter 向きだと言われ強く勧められてしまいました。というわけで、とりあえずいろいろと考えた上でやってみようと。
匿名の方がよいと言われたので、この場ではどこかの日の夜中の1時間だけアクセス先を書いてみようと思います。