新課程数学の基本 (5)
今回、数学IIIと数学Cが数学IIIに統合された理由の一つとして
「数学Cの教科書を買わされたけど、全然使わなかったじゃないか」
という声があったかららしい。
つまり、数学Cの教科書は買ったのだが、実は授業を行っていない学校が結構あったということだろうか。また、旧課程では、数学Aは教科書の内容をすべて履修するものの数学B, 数学 C では教科書に書かれてある部分の半分しか履修しない。せっかく、買ったのに半分しか学習しないというのは、数学の他にどの教科があるのだろうか。
新課程でも数学 B の「確率分布と統計的な推測」は履修する学校はほとんどない。もしも、「数列」と「ベクトル」のみを扱った教科書の発行が許されるのであれば、それは飛ぶように売れることだろう。
さて、その数学 III に取り込まれた「複素数平面」であるが、前回に取り入れられたときは、北大、一橋大、東京医科歯科大が初年度から出題したが、多くの大学は新課程 3 年目からであった。東北大、東工大、慶応(医) のようにほとんど複素数平面に興味をしめさない大学もあった。
出題の仕方であるが、まず、最初はド・モアブルの定理を使う問題、回転移動した点の座標を求めるために利用する問題が多く、徐々に複素数平面の図形、1 次分数変換など難化していく傾向にあった。約 10 年間複素数平面が出題範囲の中にあったわけだが、最後の 1, 2 年はそれほど手の込んだものは少なくなっていったように感じる。
|z-a|=r の表す円とか、 w=(z+1)/(2z-1) による変換など教科書では扱わないものもあるので注意を要する。
ちなみに記号に関して不便なことが 2 つある。一つは、絶対値が r, 偏角がθである複素数を r(cosθ+isinθ) と書くのはちょっと長いということである。一部で適用されているように、
もう一つは「ベクトルABを表す複素数」に記号を用意してもらいたいということである。もちろん、その都度定義して使えばよいのだが、頻繁に使うものであれば共通して使えるように整備すべきと感じる。