新課程数学の基本 (2)
前回の数学 A の話を続ける。
すでに説明したように、「数学 A」は 3 項目から 2 項目を選択すれば履修したことになる科目である。その 3 項目は
「(1) 場合の数と確率」「(2) 整数の性質」「(3) 図形の性質」
であった。
さて、この 3 つの項目であるが、3 項目から 2 項目を選ぶ「選択科目」だけにある特徴がある。それは、
「教科書の上では、(1), (2), (3) のどの分野も同じ分量になるように作られている」
ということである。
一般に、1 単位とは週 1 時間の授業を年間 35 週(つまり 35 時間)授業したときに学習し終える内容ということになっている。もちろん、現実に高校現場では年間 35 週を確保するのは厳しく、これが 32 週になったり、28 週になったりする。数学 I のような重要な教科の場合、高校現場によっては 28 週ではしっかりと終えることができないため 3 単位(数学 I は 3 単位)のところに週に 4 時間をあてて時間を確保することもある。
話を元に戻そう。文科省はカリキュラムを組むときに (1), (2), (3) がどれも同じ時間で学習できるように(カリキュラムを)組むことが要請される。するとどうなるか?
大学入試の観点から見れば (1), (2), (3) はそもそも均等な分量ではない。大学入試のためにその出題内容とそれを学習するために必要な時間の比は
(1): (2): (3) =5:3:2
くらいであろう。
となれば数学 A という 3 項目から 2 項目を選ぶ「選択科目」としては、
・(1) の場合の数と確率は、必要な内容であっても削って 1 単位分する。
・(2) の整数の性質と (3) の図形の性質は、あまり必要な内容でなくても付け加えてそれぞれ 1 単位分にする。
という処置をせざるをえない。
例えば、「場合の数と確率」では、今回の改定で期待値が削られて、代わりに条件付き確率が入った。これは、期待値が必要かどうかではなく、従来のまま期待値を盛り込むと時間がかかり、1 単位分では収まりきれなくなるからだ。そういう理由で何を学習するかは決まる部分がある。
実際、2003 年から施行されたカリキュラムもこの「期待値」は削られそうになった。そのときは、会議である女性教員が「私ならば、この時間内で期待値の学習は終わらせることができます!」という一言で「期待値」が存続されたことがその場にいた関係者から明らかになっている。
話を新課程のカリキュラムに戻す。このようにして作られたカリキュラムであるから、文科省の監視下におかれた教科書に従った学習では、大学入試のことを考えた場合
(1) は物足りない
(2), (3) はやややりすぎの部分もある
ということになる。
高校現場では、この (1), (2), (3) にどのくらいの時間を充てるかが大切である。