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誤った学習をしている人の典型例

生徒の質問を聞いていると、その質問内容から、その質問事項というピンポイントの問題ではなく、そのような質問をするに至った大きな過ちが見えることもある。

最近、次のような質問を受けた。
数学IIIの漸化式で与えられる数列の極限の問題。

a_{n+1}=1/2 a_{n}+1/a_{n}
a_{1}=1

という漸化式。まずは、解答を説明したあと生徒は次のように質問に来た。

「先生、特性方程式のやりかたでよいですか?」

最初何のことかよくわからなかった。それで、もう少し詳しくと言うと、漸化式のa_{n+1} と a_{n} をともに x におきかえて

x=1/2 x+1/x

とする。これを解き, x>0 の範囲の解を求めると√2 になる。したがって、漸化式は

(★) a_{n+1}-√2 =1/2 (a_{n}-√2)   (←正しくはありません)

となるというのだ。
この理屈もよくわからなかった。そこで、生徒と話をしても話が通じない時間が数分あり、その数分後に生徒の主張がようやくわかった。それは、

a_{n+1}=pa_{n}+q
という漸化式の場合、 x=px+q をとく。そして、その解をαとすると漸化式は

a_{n+1}-α=p(a_{n}-α)

と変形できる。だから、最初の漸化式の場合も同じようにできて (★) が得られるのではないかということだった。

さて、これだけの質問でこの人は数学を最悪の勉強方法で行っていることがわかる。
つまり、すでに知っているとされる漸化式 a_{n+1}=pa_{n}+q を x=px+q を解いて
  a_{n+1}-α =p(a_{n}-α)
となることを全く理解せずに、形式的にただ覚えているだけなのだ。漸化式をこのように変形できるということを理解しようという姿勢はおそらくない。ただ、解くための手順を丸暗記しただけにすぎないのである。
だからこのような質問をしてしまう。数学を舐めているといわれても仕方ない学習姿勢なのだ。
数学ではよくわからないものを平気で結果だけ使って解こうという姿勢は最悪なのである。

This entry was posted on 水曜日, 6月 26th, 2013 at 2:26 AM and is filed under 教育, 数学. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

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