学校再建の手法
昨今、少子化の影響を受け私立中学・高等学校および大学、あるいは公立の学校までも募集に苦労している様子が伺える。これに目をつけて「学校再建ビジネス」があるのをご存じだろうか。
実は、学校再建に成功した例は大きく2つに大別できる。それは、
[1] 外部主導型
と
[2] 内部主導型
である。
[1] 外部主導型は、銀行やそれなりのブローカーがある。手法はいたってビジネスライクである。ニンジンをぶら下げ教員達をよく言えば「やる気を起こさせる」、悪く言えば「煽る」方法で何とかしようとする。そんな方法でうまくいくのかと思う方もいるかもしれないがいくつかの成功例はある。(学校名を出すのは遠慮しておく) しかし、内心, 教員達の反発は大きいから実は成功の陰で問題も起こっている。
[2] の内部主導型は、校長、副校長あるいは教頭に有能な人がいる場合にいくつかの例がある。この場合は、教員に一体感を保ちうまくまとめあげ、よい雰囲気のもと学校が再生する。
成功したかどうかは別として、[1],[2]のどちらの方法で取り組んでいるかだけで言えば、かなりの割合で[1]ではないだろうか。[2]はカリスマ的教員の存在がその学校に必要だからなかなか難しい。[1]の場合に気になるのは、教育の質を無視した行動も目に付くところだ。もちろん、その学校の良い点を外にアピールする力は、その点について素人である普通の教員よりはかなりよいので、このような点は十分に参考にはなるのだが。
また、[1]の人の場合、「生徒数が増えれば給料を上げると言えば、教員は頑張るだろう。それで頑張らない教員は●●だ」のようなことまで言い張る。しかし、教員心理としては「給料を上げてほしいから頑張るのではない。生徒を育てる喜びがあるから頑張るのだ」という。[1]型の「立て直し屋」にはこの教員心理を理解できない人が多く、ニンジンさえぶら下げれば教員達は真剣に頑張ると思っている。一方で、「給料を上げてほしいから頑張るのではない」と言い張る教員には、自分の授業に妙に自信をもちすぎて、外部からの意見を全く聞かなくなってしまった人もいる。これはこれで困りものである。
[1]型の「立て直し屋」には、教育の質がまったくわからない人が多いし、そんな質は関係ないと思う人も少数ではない。高校の現場では、数学IIIを苦手とする数学の教員も珍しくないし、また、平気で「ウソ」を教えている教員もいる。生徒にアンケートでもとって評判が悪ければその教員を叩けばよいなどと思っている人もいて、それは間違った方法である。
私は、個人的には[2]のタイプの内部主導型を応援したいと思う。だから、私の場合は数学の教員の少しでも役に立ってもらえるように、教員用のセミナーを開き、そのために呼ばれれば地方にも出向いている。(今年度も、当社のHPから数件の依頼があった。)
このことは、日本の数学のレベルを大きく上げることにもなり、学校再建という日本全体の視野から見れば小さい問題よりもかなり壮大なことである。
最後に学校再建については[1]でもなく[2]でもない方法として、学校教員のプロ、教育のプロを一定期間派遣し、現場の先生を主導していく方法が考えられるだろう。現場の先生が役に立たないというのではない。外からの刺激を受けるべきだということである。
最近、[1]型の人と話をする機会があったが、教員を「もの」か「道具」としか見ていないのが気になった。他の企業の再建とはちょっと違うのではないかと私は思う。一般企業では、ダメ社員を発奮させるために、「ニンジン作戦」や「罵ったり」するかもしれない。しかし、学校では、「ニンジンを見せられた人」「罵られた人」が生徒を教育するので生徒にも影響はあることだろう。そこが、一般企業と学校現場の大きな違いである。
※ 教員の方で、うちの学校は、今、[1]型、あるいは[2]型の改革をやっているというのがあれば、成功・不成功に関わらずどのような状況であるかを報告してくれませんか。もちろん学校は匿名で構いません。この場で頂いた意見を紹介します。