数学教育研究所 公式サイト Mathematics Education Institute Official Web Site
Mar.30
2016
次の新課程までの予定を載せました。

次の新課程までの進行表を載せました。どの年度にどの段階まで進むかが記されています。ご参考にどうぞ。

http://math.co.jp/pc/w_teacher.php

Mar.25
2016
第7回外国語WGの報告

次の新課程の文科省で行われた第7回外国語ワーキンググループの記録を載せました。ご参考にどうぞ。

http://math.co.jp/pc/w_teacher.php

 

Mar.24
2016
今年度の出題分布表

今年の入試は新課程2年目でしたが、こちらにいくつかの大学の出題分布が記録されたものがあります。

資料としてお使いください。

http://math.co.jp/pc/w_student.php

 

Mar.13
2016
第13回高大接続システム改革会議議事録

第13回高大接続システム改革会議の議事録を載せました。配布資料についてはリンクを貼ってあります。

ご参考にどうぞ。

http://math.co.jp/pc/w_teacher.php

 

Mar.11
2016
第5回理科WGと第3回数理探究WGの議事録

次期新課程のための文科省の会議のうち、第5回理科ワーキンググループと第3回数理探究のワーキンググループの議事録をこちらで公開しました。

主催者のものではありません。こちらの記録に基づいたものです。

http://math.co.jp/pc/w_teacher.php

 

Feb.27
2016
第12回高大接続会議のまとめ

こちらに第12回高大接続会議(2016.2.24) のまとめをアップしました。ご覧ください。

http://math.co.jp/pc/w_teacher.php

 

Feb.18
2016
今後の高等教育の動きについて

このサイトの中の、「高校数学を考える (教員向け)」の中に新課程に向けての文科省主催会議の概要をまとめてあります。必要に応じてご覧ください。

Jan.01
2016
新年のご挨拶

あけましておめでとうございます。本年も引き続き, 数学を学習する人によい学習環境(教材, 授業, 講演)を提供し, 数学教育に携わる人に対し, 教育に関する役に立つヒントと材料の提案をし, 数学教育の改革に力を注いでいきたいと考えています。
これまでに引き続き, 当社は, 日本国そして海外の一部の国々を含めた数学教育の中心地であることを今後も目指し続けます。

今年の具体的な活動計画として, 昨年中に出版する予定で未刊の「プラスエリート数学IA」に引き続き「IIB」と「III」の刊行を予定しております。また, それ以外にも書籍化する企画のものがいくつもあり実現に向けて努力していく所存であります。

また, 昨年に引き続き, 次の学習指導要領の改訂にも目を向け, メディアの報道では伝えられていない情報を発信していき, 数学教育に関心のある方々が力を出せる場を作っていきたいと考えております。

本年もよろしくお願いします。

 

Dec.25
2015
第9回高大接続システム改革会議で提示された数学の問題の解説

12月22日の文科省の高大接続システム改革会議の中で, センター試験の後継試験となる「大学入学希望者学力テスト(仮称) 」の問題例が発表された。

問題についてはこちらを参考にしてもらいたい。

まず, 問題の質についてであるが, 個人的な勘ではあるが, 今回の会議に間に合わせるために急いで作成した様子があり, 問題だけでなく解答部分についてもこれでよいのかと思われる部分が多々ある。しかし, 今はそこに目を向けるべきではない。例えば, 今の課程のセンター試験の試作問題(データの分析の部分と整数の部分) を発表したときも試作問題は数学Iの範囲を守られていない部分や設定として雑な部分があったものの, センター試験ではよくできた問題を出題してきた。したがって, 今回も「問題としては不出来」と言いたくなる部分は, 当然本番の試験では修正して完成度の高い問題を出題されると考えられる。(配布資料の1ページ目にも今回は方向性を見てもらいたいと書いてある。)

[総評]
問題一題一題が長文化した。このような問題の場合, 受検者は問題に取り組む時間はかかるが, 答える量は少ない。したがって, この試験では今までに測れなかった部分を知ることができる反面, 測れなくなる部分も多い。そうなると, この問いだけで, 数学がよくできる人からそうでない人を分類するのは難しい。しかも, 今になって採点の難しさがクローズアップされてきた。
さて, マスコミの報道で誤解を招きやすいと感じるのは, この試作問題のような問題のみで試験を行なうような書き方に個人的に見えるところもあるが, 文科省側ではすべてを記述問題にするとは言っていない。推測ではあるが, このままでは 100 点満点とすると 20 点程度がこのような記述問題になるのではないだろうか。
次にこれまでの経緯から考えよう。これまでの流れでは初期のころは早々とセンター試験の廃止を決定し, 「記述式の導入も検討する」とした。そのうち記述式が新試験の目玉となってきたが, 前回の会議あたりから, 「今までの試験(センター試験)の良い点も調べた上で新しいものを作らなければいけないのでは」と意見が出て、センター試験もやや見直させる感じになってきた。「センター試験がすべて悪かったわけではない」となってきたのである。これは, 一方でありがたい話でもある。つまりこれまで積み上げてきたセンター試験のノウハウを活かすことを理由に, 小改訂で済む可能性がでてきたからである。
それでは, 次に設問ごとに見て行こう。

(1) について
身近な話題と数学の関連を題材にしているかのように考えさせられる問題である。一見すると問題を解くあたってスーパームーンの話はほとんど関係がなく, 問題は要するに

「視直径 \(\theta\) 分の円を 500mm 離れた位置のスクリーンに描くとすれば, 円の直径はいくつになるか」

という問題にすぎない。何と簡単でつまらない問題ではないか ・・・ しかし, こう考えられるのは数学の問題を解くことに慣れている人である。言い方を変えよう。この問題には問題解決に関係のない情報も多く混ぜられている。これは日常生活によくあることであるが, そもそも私たちが日常生活でのことで数学を活用するときは自分で必要な情報を選び出してそれを応用している。これに対して, 今の受験問題は, 問題文では解くために必要な条件はほとんど必要十分な条件を与えられるようになっていて, 不必要な情報は与えられることはほとんどない。逆に与えると「失敗作」とか「出題ミス」のようなレッテルを貼られることもある。しかし, そうではなくあえて身の回りの出来事を数学に活かすにはいくつかの情報から必要な情報を選び出せる能力が必要であることがこの問題を通して伝えたいことではないのかと感じる。
なお, この問題については, 文科省側の説明者が「スーパームーン」を題材にしたことに大変満足した感じであった。
ちなみにこの問題は, 解く過程を聞いているのではなく, 最後に \(1000\tan \left(\displaystyle\frac{\theta}{2}\right)’\) などを書き込めば正解ということで, 「数式を書き込む」から「記述問題」なのだそうだ。

(2) について
理由を述べさせる問題も出題したいということを言いたかったのであろう。もちろん, この解答では不備と言われかねない。これで「等脚台形」が証明できたとは思えない。しかも, 解答の図が理解に苦しむ。また, 問題文でも校庭が水平である(坂になっていない)ような仮定も本来は書かれていなければならない。
さて, このような点はおそらく急いで作ったのだろうということで, これ以上この問題の出来不出来を議論しても意味がない。このような証明問題も出題したいという意思がわかればよい。
なお, このような問題を出題するときにはいろいろと出題についての注意があって, 自由解答にする場合は, 別解が出てくるのがその一つである。私の経験では, どんなに採点基準を用意してもそれに当てはまらない問題が出てくる。
また, どこまで詳しく説明するかについて, うまく解く側にメッセージを与えるかが大切である。例えば, 厳密に書こうとすれば答案はかなり長くなる。逆に「そこまで厳密に書かなくてもよい」というのであれば答案を厳格に書いた人は損をすることになる。答案のスペースなどからも判断できるが, そのあたりの基準も先に公表する必要な本来ならばある。

(3) について
まず, 最初に「この問題は数学 I ではないのでは?」と思う人も多いだろうが, その点は(マスコミの報道にはないが), 会議で「数学 I の範囲ではないともとれるが, 出題の仕方を見てほしい」との説明があったので, あまりこの点は突っ込まない方がよい。
次に, この問題の解答例では 13 行にわたる説明と図が描いてあるが, これはこの設問では要求しているものではなく, この問題の場合は空欄が用意されていて, そこに \(\displaystyle\frac{\mbox{AD}}{\mbox{BC}}=\displaystyle\frac{h-g}{h-g-d}\) を埋めればよいという説明があった。「比がどのような式で表されるか」という問いに対して, \(\displaystyle\frac{\mbox{AD}}{\mbox{BC}}\) を選択するのも問うことの一つであると思われる。

最後に, 試験というのは「問題の出題」と「それをどう採点するか」のセットで決定する。このうち今回は前者を示されたが, 車の両輪である後者の説明は次回にまわすということで持ち越しになった。どう採点するかの説明を受ければさらに新テストの様子が見えてくるだろう。

[意見]
この会議には, 塾・予備校の担当職員, 出版社の人, マスコミなどが傍聴しているが, 残念なことは, 高校数学に精通している人は少ない。実際に, 高校数学が理解できる人, 教える人が行けば受け取る情報は違ってくる。各塾・予備校からはそのような人を傍聴に参加させるとよい。

Dec.24
2015
第9回高大接続システム改革会議概要

2015年12月22日に第9回高大接続システム改革会議が文部科学省3階講堂で行われた。

今回の議題は「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」についてである。
新たに導入される予定の記述式の問題について、具体的なイメージが示された。

問題イメージは、以下の文部科学省のサイトで公表されている。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/12/22/1365554_06_1.pdf

なお、この数学の問題に関するコメントは別の記事で触れることとする。

従来のセンター試験が多肢選択式であったのに対し、新テストでは記述式を重視して取り入れ、思考力・表現力・判断力を評価しようというものである。
ただし、問題の質を改善することで、選択式の問題でも思考力などをはかることができるので、選択式の問題も併用する。

現時点での対象科目は国語と数学であり、英語については外部の試験を活用する。
記述は最大でも300字程度までとする。
記述問題は採点が大変であるため、別日程で行うことも検討されている。

問題例として、国語3題、数学1題が示された。
これはあくまで作問のあり方を示したイメージであり、難易度などを考慮したものではないとのことである。
特に、数学の問題に関しては、難易度も高く、厳密には数学Iの範囲を超えた部分もあるとのことであった。

国語では「国語総合」が題材となっている。
例1は、警視庁の事故統計資料を示し、その変化の原因などを議論する文章の空欄を40字や100字で記述する問題である。
例2は、小説家と作曲家に関する文章を読んだうえで、その共通点について【状況】と【問題】の組み合わせを選び【解決法】を30字から50字で記述するという問題である。これは連動型複数選択式に記述を加えたもので、組み合わせによって複数の解答が考えられる正解が1つではない問題となっている。
例3は、公立図書館に関する新聞記事を読んだうえで、今後の公立図書館の在るべき姿についての自分の考えを300字以内で記述する問題である。
その際に、自由な記述ではなく、段落の構成や、本文の引用などの条件があり、この条件を満たすように記述をしなければならない。

数学では「数学I」が題材となっている。
スーパームーンや校庭に描かれた形を写し取る方法について、三角比を用いて導いた関係式や理由を記述するという問題であった。

記述式を導入することによって、作問の幅が広がり、これまで有限個の解答から選び出していたものを自ら書き出すことによって新たな力をはかることができるというメリットがあるものの、実現可能性という側面から解答の形式に条件をつけたりしてコストとのバランスをとった結果が今回の問題案である。
公立図書館やスーパームーンなど、身近な事柄を題材にすることによって、日常において様々な体験をしていることが活かされるような効果を期待しているようだ。

さらなる論理性や主体性など、このテストではかれない能力は、自由記述や調査書などを用いた各大学による個別選抜に委ねられることとなる。

さらに、実施の具体的な方法や時期、採点基準や評価のばらつきへの対策、結果の示し方など、次々に質問が投げかけられたが、次回以降の議題であるとして明確な回答は避けられた。
今回議論するテスト問題の内容とこれらの課題とは密接に関わっているのであるが、議題を分けて議論することとなり、各委員も意見を言いづらい状況となった。
そのため、予定の時間より早めの14:45頃に終了となった。