大人と子供の違い
毎年この時期になると予備校の通常期の授業が終了する。もちろん、受験生はここで勉強をやめるわけではなく、授業の形態を「通常授業」から「講習」に変えて続けるのである。とは言うものの、一応、通常期の授業が終わるわけだから一区切りがつくことには変わりはない。したがって、とりあえず 4 月からの先生と生徒の関係になった人たちにはお別れの言葉を述べて授業を締めくくることもある。そのようなときに話す内容の 1 つを書いてみようと思う。それは「大人と子供の違い」についてである。なお、大人と言えば、日本の法律上の定義は20歳からであるが、予備校の高卒生の場合はほとんどはこの段階では 19 歳以上で、来年は 20 歳になるか、すでになっている人達である。18 歳の高校生に対しても、遠くないうちに 20 歳になるのだから関係なくはない。
人の考え方は、幼少のときは、特に親の考え方などその人が置かれた環境に大きく左右される。例えば、ある小学生が路上にゴミをポイと捨てたとする。このような場合、悪いのは 100% 小学生であると言えるだろうか? 私は、小学生が全く悪くないとまでは言わないが 100% ではないと思う。それは、親が普段からそのようなことを平気でしていてそのようなことをしてもかまわないと子供に教えている可能性もあるからだ。また、言葉使いが悪い中学生、電車の中で周りの迷惑を考えずに騒ぐ高校生に対しても、このことが悪いことであっても、それが 100% 中学生、高校生の責任かというとそうではないと考える。なぜなら、このような人をとりまく環境 (親、友達など) が、そのようなことをすることは別に悪くはないと考え、そのような中でこれまで育って来たことも考えられるからである。
例えば、今、あなたのまわりの人が全員、路上に紙くずを投げ捨てるような人であったとしよう。そのような中で育ってきて、それが普通の世界にいるあなたにとっては、路上にゴミを投げ捨てることがよくないことだと気がつくのは難しいのではないだろうか。もちろん、だからといってゴミをポイっとするのがよいことだと言うつもりはない。
さて、本題の「大人と子供の違い」であるが、子供の場合、ゴミポイが 100% が子供の責任でない(育って来た環境を考慮しなければならない)のに対し、「大人」となったあとは、いくら育って来た環境が不幸であったからと言っても、社会常識からそれは悪いことであるということに気がつかなければならないだと考える。つまり、自分の親の教育のせいにしたり、自分のつらい過去を理由にしてはいけないというのが(大人と子供の)違いであると考える。社会的に見て迷惑なこと、悪いことをした場合に、もちろん育って来た環境のせいでそのようなことをしてしまうことはあるかも知れないが、「悪いことだということにそろそろ自分で気がつかなければならない」というのが「大人」である。
例えば、電車に乗るときに割りこむことは、たとえあなたの両親がそのようなことをしていて小さいときからそうするように育てられたとしても、「大人」になったら親のせいにはできないのである。そう、大人になれば、今度は悪いのは100%あなたのせいである。
こう考えると、歳をとってもまだまだ「子供」のままの人も多く見かける。私は、希望する人に大学進学の手伝いをするのが役目であって、その後生徒たちがどのような道を歩んだかは原則わからない。わからなくても、生徒達が確実に、私が考える「子供」から「大人」に変化してもらうのを願っている。