数学教育研究所 公式サイト Mathematics Education Institute Official Web Site

分数不等式 (解答編)

(1) まず, 与えられた式は不等式ですので,
「\(\displaystyle\frac{2x-1}{x+2}>x-1\) の分母をはらって

    \(2x-1\gt (x-1)(x+2)\)」  (\(\leftarrow\) 誤り!)

のようにはならないことに注意しましょう。なぜならば, \((x+2)\) は正であるとは限らないからです。\(x+2\gt 0\) であるような場合, つまり \(x\gt -2\) である場合は, 与えられた不等式は,
    \(2x-1\gt (x-1)(x+2)\)
となりますが, \(x+2\lt 0\) つまり \(x\lt -2\) である場合は, 与えられた不等式は,
    \(2x-1\lt (x-1)(x+2)\)
となります。ですから, \(x\gt -2\) の場合と \(x\lt -2\) の場合に分けて不等式を解けば正解が得られます。
もちろんこの方法でもよいのですが, ここでは場合分けをしない方法で解いてみます。それは両辺に \((分母)^{2}\), すなわち, \((x+2)^{2}\) を書ける方法です。\(x+2\neq 0\) のときは \((x+2)^{2}\gt 0\) ですので, 次のような方法が可能です。ただし, 3 次不等式を解く必要があります。

与えられた不等式 \(\displaystyle\frac{2x-1}{x+2}\gt x-1\) の両辺に \((x+2)^{2}\) をかけて
    \((2x-1)(x+2)\gt (x-1)(x+2)^{2}\)
    \((x-1)(x+2)^{2}-(2x-1)(x+2)\lt 0\)
    \((x+2)\{(x-1)(x+2)-(2x-1)\}\lt 0\)
    \((x+2)(x^{2}-x-1)\lt 0\)
    \((x+2)\left( x-\displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\right)\left( x-\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2}\right)\lt 0\)
となる。ここで, \(-2\lt \displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2}\lt \displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)
であるから, 不等式の解は,
    \(x\lt -2\), \(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2}\lt x\lt \displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)  (答)

(2) 両辺に \((x+2)^{2}\) をかける方法で (1) を求めましたが, 同じように考えて,

 \(\displaystyle\frac{2x-1}{x+2}\geqq x-1\iff (2x-1)(x+2)\geqq (x-1)(x+2)^{2}\)

のようになるかというと, 今度は正しくはありません。どこが正しくないかというと, それは, 左辺は \(x=-2\) では成り立たないのに右辺では \(x=-2\) で成り立ってしまう点です。つまり,

   「(1) で求めた解に等号を入れればよい」という考えは誤り

なのです。一般に, 分母を払うときは, 払った後で「元分母が 0 でない」ことに注意します。つまり,

  \(\displaystyle\frac{a}{b}=c\iff a=bc\) は誤り!
であって,
  \(\displaystyle\frac{a}{b}=c\iff a=bc\ かつ\ b\neq 0\)
なのです。したがって, ここでは,

  \(\displaystyle\frac{2x-1}{x+2}\geqq x-1\iff (2x-1)(x+2)\geqq (x-1)(x+2)^{2}\) かつ \(x+2\neq 0\)

としなければなりません。
なお, (1) で
  \(\displaystyle\frac{2x-1}{x+2}\gt x-1\iff (2x-1)(x+2)\gt (x-1)(x+2)^{2}\)
のように \(x+2\neq 0\) を書かなくてもよかったのは, 右側の条件が \(x+2\neq 0\) を含んでいるからです。

与えられた不等式 \(\displaystyle\frac{2x-1}{x+2}\geqq x-1\) の両辺に \((x+2)^{2}\) をかけて
  \((2x-1)(x+2)\geqq (x-1)(x+2)^{2}\ \ \cdots\cdots\,①\) かつ \(x+2\neq 0\ \ \cdots\cdots\,②\)
ここで, ①は (1) を利用すると,
  \(x\leqq -2\), \(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2}\leqq x\leqq \displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)
これと ② より \(x\neq -2\) をともに満たす範囲を求めて,
  \(x\lt -2\), \(\displaystyle\frac{1-\sqrt{5}}{2}\leqq x\leqq \displaystyle\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)  (答)

タグ:

This entry was posted on 火曜日, 12月 15th, 2015 at 1:00 PM and is filed under 計算のエチュード. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

Leave a Reply




Message: