穴埋め式と記述式の問題の問える力の違い
2021年(2020 年度) にセンター試験が廃止され, 大学入学希望者学力評価テストが実施される予定になっている。その際, 「記述式」の試験を導入し, より細かく受験者の力を把握しようという考えがある一方, それは実施が難しいからということで「マークシートでも十分」という意見もある。
さて, マークシートで試せない力を一つあげよう。それは場合分けに関する問題にある。ちなみに, 場合分けは高校数学の中で重要な要素である。
まず, 次のような問題考えよう。
【問題 1 】
西暦 X 年 (2000<X<2100) の 2 月 1 日は日曜であった。この年の 3 月 1 日は何曜日であるか。
少し考えると, 3 月 1 日が日曜の場合と月曜の場合があることがわかる。そして, どのような場合に 3 月 1 日が月曜になるかもわかるであろう。
記述式の場合は, この問題の答は次のようになる。
X が 4 の倍数のときは月曜日, X が 4 の倍数でないときは日曜日
これを穴埋め方式にすると
X が ( ア ) のときは月曜日, X が ( イ ) のときは日曜日となる。
( ア ), ( イ ) を埋めよ。
このような感じで場合によっては選択しを与えることもある。
さて, 記述式と穴埋め式の大きな違いは, 「場合分けがあるということを自分で気がつくことができるかどうかを問えるか」ということである。穴埋め式の場合は, 「この問題は場合分けがあるよ」ということを教えてくれる。しかし, 記述式の場合は自分自身で場合分けがあることに気がつかなければならない。これは大きな違いである。こういう力を穴埋めで問うのは厳しい。
例えば, 次のような問題を考えてみよう。
【問題 2 】
動点 P が数直線上を次のように動く。
・最初は原点 O にいる。
・さいころを投げ, 偶数の目が出れば点 P は +1 だけ移動し, 奇数の目が出れば -1 だけ移動する。
\(n\) 回後に点 P が原点 O にある確率を求めよ。
この問題も \(n\) が偶数と奇数の場合で分けて答えた方がよいということに自分で気がつかなければならない。しかし, 穴埋めでは「場合分けのある問題だよ」ということを教えてくれる。これでは, 問題の存在価値も半減してしまう。
場合分けのある問題は, どのように場合分けをして考えると効率が良いということを考えることもときには力のいる作業だったりする。やはり, このあたりの力を試すには記述式がかなり向いている。問題は, 記述式の答案をどう評価するかである。記述式にしたとたんいろいろな解法に対する採点基準を用意しておかなければならない。全国規模で行うときに, 公平性が問題になる。