なんでこうなるの?
このようなタイトルを見て、萩本欣一を思い出せる人は私と同じ年代かそれ以上の人だ。今回は、もちろんふざけて言っているわけではない。
文科省の定めた新課程の数学のカリキュラムについて、つくづくこれを作った人の常識が疑われると感じている。
というのは、前回の改訂のときもそうであったが、とてもカリキュラム作りに日本のベストメンバーをあてているとは思えないからだ。
文科省のカリキュラムっていつも「なんでこうなるの?」と言いたい気分である。
最近、私は、このカリキュラムに沿った教科書を書いている。もちろん「検定外」の教科書である。だから、余計カリキュラムの不備が目立つ。
いくつか取りあげてみよう。
今回は、各教科書とも「必要条件・十分条件」の扱うタイミングに苦労している。
・指導要領では、「数と式」の中の最初の方(式の展開、因数分解よりも前)で扱うことになっている。これではまだ説明するためのサンプルが少ないということと、高校数学に慣れていない段階(4月~5月上旬)なので厳しいのではと思う。大手の教科書ではこの順番になっていない。
・数研出版の教科書は、「数と式」の最後の節にある。タイミングとしてはまあよいのかもしれない。しかし、
「『必要条件・十分条件』がなぜ『数と式』なのか!?」
はなはだ不可思議である。
・東京書籍はそのあたりをよく考えてあり、別の章としている。したがって, 文科省のカリキュラムの通りなら、数学 I は 4 章構成であるが、東京書籍は 5 章構成である。こちらの方が理にかなっている。
「図形と計量」の余弦定理について、一言いいたい。これは、今回の改訂が理由ではなく、これまで受け継がれてきたことであるが、
余弦定理として、なぜ、
a^2 =b^2+c^2-2bc cos A
だけでなく、
a^2=b^2 +c^2 -2bc cos A
b^2=c^2 +a^2 -2ca cos B
c^2=a^2 +b^2 -2ab cos C
を書く必要があるのだろうか。これは、一つあればよい。
a^2 を求めたいとき、隣の辺の長さと向かい側の角の余弦で決定することが大切なのだから、それがわかればよいので 3 つ書く必要はない。
「a^2 が b^2, c^2 になったらわからなくなるのですべて書いた」
のであれば、そのような勉強をする人は辺の長さが p,q,r になると分からなくなってしまうではないか。
ちなみに、数学Iにおいて、文科省のカリキュラムでは、「数と式」が最初にあり、その次が「図形と計量」(主に三角比)、その次が「二次関数」最後に「データの分析」となっている。ところが、これまでは「二次関数」が「三角比」よりも先に学習していたためほとんどの教科書では(すべてをチェックしたわけではない)「二次関数」が先である。文科省はなぜ「図形と計量」を先にしたのだろうか。おそらく彼らなりの理由はあるはずだが。
また、「図形と計量」の最後に三角比を平面図形、空間図形の考察に活用すること、とあるが、各社とも空間図形の活用に苦労している。
そもそも、空間図形の活用を無理にここでする必要があるのだろうか。なお、空間図形については、数学 A にも似たような単元がある。
まだ、数学 I だけでもいくつか気がついたことがあるのだが、今日はこの辺にしておく。
6月 20th, 2012 at 6:40 PM
萩本欽一さんですね。