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絶対値記号を含む方程式と不等式 (解答編)

 絶対値記号で表される方程式と不等式は, 一般には「絶対値記号内の正負で場合分け」をするのが基本ですが, 場合分けを回避して解を求めることもできます。ここではその方法を考えていきます。
 
(1) 例えば, 方程式 \(|\,x\,|=1\) の解は, \(x=\pm 1\) です。これにならってどのような実数 \(a\) の場合でも
  「\(|\,x\,|=a\) の解は \(x=\pm a\)」 \(\cdots\cdots\) (★)
となるかと言えばそうはいきません。(★) が成立するのは \(a\geqq 0\) のときだけです。\(a\lt 0\) のときは「解なし」になってしまいます。
 このことをふまえて解くと次のようになります。

   \(|\,x^{3}-5x+2\,| =x^{3}+1\)
 \((左辺)\geqq 0\) より, \(x^{3}+1\geqq 0\), すなわち,
      \(x\geqq -1\)  \(\cdots\cdots\,\)①
のもとで考える。①のとき, 与えられた方程式は,
      \(x^{3}-5x+2=\pm (x^{3}+1)\)
となる。
(i) \(x^{3}-5x+2=x^{3}+1\) を解くと,
      \(x=\displaystyle\frac{1}{\,5\,}\)
となり, これは①を満たす。

(ii) \(x^{3}-5x+2=-(x^{3}+1)\) を解くと,
      \(2x^{3}-5x+3=0\)
      \((x-1)(2x^{2}+2x-3)=0\)
      ∴ \(x=1\), \(\displaystyle\frac{\,-1\pm \sqrt{7}\,}{2}\)
この中で①を満たすものは,
      \(x=1\), \(\displaystyle\frac{\,-1+\sqrt{7}\,}{2}\)
である。
 以上より, 求める解は,
      \(x=\displaystyle\frac{1}{\,5\,}\), 1, \(\displaystyle\frac{\,-1+\sqrt{7}\,}{2}\)  (答)

(2) 方程式の場合と同様に, 実数 \(a\) に対して不等式 \(|\,x\,|\lt a\) が成立するにはまず \(a\geqq 0\) でなければならないと考えてしまうかもしれませんが, 次の例はどうでしょうか。

  • \(a=1\) の場合
      \(|\,x\,|\lt 1 \iff -1\lt x\lt 1\)
  • \(a=-1\) の場合
      \(|\,x\,|\lt -1 \iff -(-1)\lt x\lt -1\)

\(a=1\) の場合は,
   \(|\,x\,|\lt a\ \iff -a\lt x\lt a \cdots\cdots\) (☆)
が成り立つことはわかりやすいですが, 実は \(a=-1\) の場合も (☆) は成り立っています。なぜなら, \(a=-1\) の場合は,
左辺は \(|\,x\,|\lt -1\) となりこれを満たす実数 \(x\) は存在しません。
右辺は \(-(-1)\lt x\lt -1\) となりこれを満たす実数 \(x\) も存在しません。

このようになるからです。つまり, (☆) は \(a\) の正負に関わらずいつでも使ってよい式なのです。
 (1) と (2) は方程式か不等式かの違いですが, これは「不等式の方がやさしい」といった大変珍しい場合なのです。
(注) (☆) の事実を「示してから使え」とする場合が全くないとは言えません。

この不等式の解は次のように求めることができます。
 \(x^{3}+x^{2}-1\) の正負に関わらず, 次のように変形できることが重要です。

\(|\, x^{3}+2x+2\,|\leqq x^{3}+x^{2}-1\) より,
     \(-(x^{3}+x^{2}-1)\leqq x^{3}+2x+2\leqq x^{3}+x^{2}-1\)
すなわち,
     \(-(x^{3}+x^{2}-1)\leqq x^{3}+2x+2\ \ \cdots\cdots\) ①
かつ
     \(x^{3}+2x+2\leqq x^{3}+x^{2}-1\ \ \cdots\cdots\) ②
を満たす \(x\) が与えられた不等式の解である。
 ① を解くと,
     \(2x^{3}+x^{2}+2x+1\geqq 0\)
     \((2x+1)(x^{2}+1)\geqq 0\)
ここで, すべての実数 \(x\) に対し, \(x^{2}+1\gt 0\) であるから,
      \(2x+1\gt 0\)
     ∴ \(x\gt -\displaystyle\frac{1}{\,2\,} \cdots\cdots\) ③
となる。
 一方, ②を解くと,
     \(x^{2}-2x-3\geqq 0\)
     \((x-3)(x+1)\geqq 0\)
     \(x\leqq -1\) または \(x\geqq 3 \cdots\cdots\) ④
となる。
 求める解は, ③ かつ ④ だから,
     \(x\geqq 3\)   (答)
を得る。

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This entry was posted on 金曜日, 12月 11th, 2015 at 6:00 PM and is filed under 計算のエチュード. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

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