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整関数(乱れた用語)

この話は、「数学の幸せ物語」(後編) にも話の流れの中で触れられています。(第14話「短期的学習と長期的学習」より抜粋)

私の考えです。数学の用語では、足りないもの、名前をつけた方が記憶に残りやすいものについては「適当」な名前をつけるべきでしょう。しかし、名前の付 け方には一定のルールがあります。受験生が名づけたものであるならばまだしも、「大人」や「書籍を書く人」「論文を書く人」レベルになると下手な名づけ方 は笑いの種になってしまいます。
さて、名づけ方についてですが、私は、
1. 名前のないものに名前をつけようとすること → O.K.
2. すでに名前がつけられているものに、別名をつけること → O.K. (例: 多項式を整式とも呼ぶ)
と考えます。しかし、
3. すでにその名前は別のものを指すのに、あえて他のものを指す用語として使う → N.G.
ではないかと考えます。あくまでも私の考えです。例えば、「素数」と用語はすでに何を指すかは一元化されていると思いますが、ある小学校の先生が「1はすべての自然数の約数で『自然数の素(?)になっている』から、1 のことを素数と呼ぼう」などというと、習った生徒はいずれ素数を習ったときに混乱します。このような場合は、この小学校の先生は本来の素数の定義を知らないのではと思いたくなります。

話を本題に戻します。「整関数」という用語があります。この本来の意味はこちらで す。ところが、ここにも書かれているように、一部の人が「数学 II の微分で扱われる関数、すなわち、y=(多項式) 型の関数」を整関数と呼んでいます。これは、もちろん本来の意味を知らないからできるわけで、特に書籍のタイトルにまで「整関数」があるものがあります。 さすがに書籍にまでこの用語を使うのは・・・と思いますし、そのような書籍は私に言わせれば数学を理解していない人が書いた「要注意書籍」かもしれません。(先ほど調べたらたくさんあるようです。ですので表現をやわらげました。)
「整関数」という用語の乱用については
こちらとか、あるいはちょっと過激ですがこちら
などに怒りにも似た反応があります。
ただ、私はそこまでは思いません。というのは、「多項式で表される関数」のことを「整関数」と呼んでしまうには一つ可哀そうな理由があるからです。それは、文部科学省の発行している書物によることがおそらく原因だからです。
私の手元の資料では、平成元年版の「高等学校指導要領解説」に何事もなかったかのように自然に「整関数」という用語が出てきています。これを読むとこの 文章を書いた人は「整関数」を「多項式で表される関数」の意味で使っているようです。そして、その使い方についてのクレームがあったことが理由なのかどう かは定かではありませんが、平成11年度版の同書には、「整関数を多項式で表される関数」として文部科学省独自の定義をしています。文部科学省で最初に 「高校指導要領解説」を書いた人は、数学をよく知らなかった人でしょうが、その後で「整関数」という用語を用いた多くの人は、この文部科学省の流れに追随 した、あるいはつられてしまった(お役所の書物に書いてあったことなので・・・という感じで)のでしょう。
今さらですが、文部科学省の指導要領には必要な用語がなく、その一方でこのような造語あります。「1次独立」という用語がないために、「模範解答」を書 く際には、あくまで指導要領内の範囲で書く制約上、「1次独立」の部分を「ベクトルaとベクトルbは平行でなく、しかもどちらも0でないから」と書きま す。もちろん、受験生が答案を作成するときは「1次独立だから」でよいでしょう。
先日の話にもあった「軌跡の方程式」の定義は一部のローカルルールですが、今回のような「整関数」のように指導要領解説が発端のこともあります。どちらにしても、造語には注意しないと、採点者に通じないこともあるので注意が必要だと思います。

This entry was posted on 火曜日, 6月 15th, 2010 at 12:00 AM and is filed under 「幸せ物語」, 数学. You can follow any responses to this entry through the RSS 2.0 feed. You can leave a response, or trackback from your own site.

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